荘園・庄園(読み)しょうえん

精選版 日本国語大辞典 「荘園・庄園」の意味・読み・例文・類語

しょう‐えん シャウヱン【荘園・庄園】

〘名〙
① 奈良・平安時代から室町時代に至るまでみられた私有地の称。八世紀に班田制が有名無実化し、公家社寺による大規模な開墾地が私有地として認められたのをはじめとし、後に口分田・国衙領も併せられた。荘地。荘領。しょう。そう。そうえん。しょうおん。
※東南院文書‐天平宝字三年(759)一一月一四日・越中国東大寺荘惣券「越中国諸郡庄園惣券第一」
② 中国で、漢以降、近代まで存続した、宮廷貴族官僚などの私有地。漢から晉、南北朝にかけての荘園は、主として別荘地としての性格が強かった。唐以降は経済的機能をもつようになり、農民に耕作させ、監荘・荘頭などと呼ばれる管理人をおいて税を徴収した。
③ 西ヨーロッパで、八世紀から一二、三世紀頃までみられる国王・貴族・教会などの領主による土地所有形態。中央に荘園庁、農家、付属菜園があり、その外周耕地、牧草地、森林があった。耕地は直営地と託営地の区別があり、夏作、冬作、休耕の輪作(三圃制度)が行なわれた。
※暴夜物語(1875)〈永峰秀樹訳〉驢牛雇夫の寓言「昔し一人の富農あり、許多(あまた)の庄園を所持し所々に草屋を構へ」
[語誌](1)荘園ははじめ国家に対して税を負担したが、平安中期以後には国家の徴税権と警察力の行使を拒否する不輸不入の権を得た。このような荘園を自墾地系荘園と呼ぶことがある。
(2)一一世紀末以後には、地方豪族がその私有地を守るために名目的に中央の権勢者に寄進して本所・領家と仰ぎ不輸不入権を得て荘園化するものが多く、このような荘園を寄進系荘園と呼ぶ。
(3)平安中期以後中世を通じて、荘園の支配所有関係は領家職・預所職・作人職などの職(しき)権に分化し重層化した。鎌倉幕府成立以後に多くの荘園に設置された地頭職は幕府が任命権を持つ荘官の一種であったが、荘園領主と在地支配をめぐって対立し、地頭請所・下地中分などによって荘園内部に領有権を確立した。
(4)室町時代には領主の代官である土豪層が荘園を実質的に支配し、農民も村落結合を強めて領主側と対立するなど荘園制は次第に変質。戦国大名の領国経営、豊臣秀吉による統一政権の樹立と土地制度の改革によって消滅。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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