菜根譚(読み)さいこんたん

精選版 日本国語大辞典 「菜根譚」の意味・読み・例文・類語

さいこんたん【菜根譚】

中国の雑学書。二巻。明の洪自誠著。儒教中心仏教道教を加味し処世法を教えた警句風の短文約三五〇条からなる。中国よりも日本で普及し、注釈書が多く作られた。

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デジタル大辞泉 「菜根譚」の意味・読み・例文・類語

さいこんたん【菜根譚】

中国の雑学書。2巻。明の洪応明著。成立年未詳。警句ふうの短文357条からなる語録で、仕官中の保身の術や退官後の山林閑居の楽しみを、儒教仏教道教思想をまじえた立場で述べたもの。中国より日本で愛好された。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「菜根譚」の意味・わかりやすい解説

菜根譚
さいこんたん

中国、明(みん)代の末期に流行した「清言(せいげん)」の書。著者洪応明(こうおうめい)は、字(あざな)は自誠(じせい)、還初道人(かんしょどうじん)と号し、万暦(1573~1619)ごろの人。四川(しせん)省成都(せいと)府の出身。儒教的教養を基礎とし、そのうえに道教、仏教に通じて三教兼修の士となることは、明代中期ごろからの流行であったが、著者はその優れた一人であった。本書は、前集は222条、後集は135条、合計357条の「清言」からなる。前集は、主として世間にたち、人と交わる道を述べて、処世訓のような道徳的な訓戒のことばが多く、後集は、自然の趣(おもむき)と山林に隠居する楽しみを述べて、人生の哲理や宇宙の理法の悟了を説くことが多い。この人生の哲理、宇宙の理法は、儒仏道三教に通じる真理であり、それを語録の形式により、対句(ついく)を多用した文学的表現をするのが「清言」である。書名は、宋(そう)の汪信民(おうしんみん)の『小学』における「人常に菜根を咬(か)みうれば、すなわち百事をなすべし」からとったものである。中国よりむしろ、江戸末期の日本で多くの人に愛読された。洪応明にはほかに『仙仏奇蹤(きしょう)』4巻(『消揺嘘(しょうようきょ)』『長生詮(ちょうせいせん)』『寂光境』『無生訣(むせいけつ)』各1巻)の著がある。

[藤原高男]

『今井宇三郎著『菜根譚』(1967・明徳出版社)』『今井宇三郎訳注『菜根譚』(岩波文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「菜根譚」の意味・わかりやすい解説

菜根譚 (さいこんたん)
Cài gēn tán

中国,明末の洪応明(自誠)の語録。2巻。合計356条の短文よりなる。出処進退,処生訓,人生の楽しみなどを儒教を中核に,道教および仏教をも取り入れて,対句構成の簡潔な文章で説いている。哲学的にはとるにたりないが,人生の辛酸をなめた著者が深刻に開陳したその人生訓は人びとを魅了し,中国におけるよりはむしろ日本において禅僧をはじめとする多くの読者を得,今日でも隠れた読者をもっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「菜根譚」の意味・わかりやすい解説

菜根譚
さいこんたん
Cai-gen-tan

中国,明末の儒者洪応明 (字は自誠) の著。2巻。成立年未詳。儒教思想を根本とし老荘思想,禅宗の説を交えた語録風の随筆。前集に在官中の仕官保身の道を,後集に退官後の山林閑居の楽しみを述べ,無欲と風雅を説く。中国よりも,日本で広く愛読された。

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百科事典マイペディア 「菜根譚」の意味・わかりやすい解説

菜根譚【さいこんたん】

中国,明末の洪応明(字は自誠)の語録。2巻。16世紀後半の成立。儒教を中心に,仏教,道教を取り入れた通俗的処世哲学書。警句風の短文350余条からなる。日本では19世紀初め以来,教養書として愛読された。

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