葉分析(読み)ようぶんせき(英語表記)leaf analysis

改訂新版 世界大百科事典 「葉分析」の意味・わかりやすい解説

葉分析 (ようぶんせき)
leaf analysis

栄養状態の診断のために葉を化学分析すること。栄養の良否は植物の生育にも重大な影響を及ぼす。そこで植物の栄養状態を調べ,なんらかの養分過不足が生じているかどうかを診断することはたいせつである。植物の栄養状態の良否は葉に含有される養分量にも影響を及ぼすので,葉を化学分析して養分組成を調べると,養分の過不足状態を診断することができる。対象とする植物はなんでもよいわけであるが,果樹の場合は果樹園に生育している1本の木全体を採取して分析することは不可能なので,葉分析がとくに有効な手段となる。分析する養分としては通常,窒素リンカリウムマグネシウム,鉄,マンガン,銅,亜鉛モリブデンホウ素などの必須元素であるが,ときに応じて,ヒ素,ニッケル,カドミウムのような有毒元素とか,アミノ酸,有機酸,糖などの有機成分も測定する。

 葉分析をするときは,分析する葉をどのように選んで採取してくるかを定めねばならないし,また健全な養分含量すなわち適量はどのくらいで,不足状態はどのくらいから生ずるかを知らねばならない。果樹の葉の採取では採取の時期は一般に葉の養分含量の日変化の少ない時期,すなわち新梢の伸長の停止した時期を選び,樹園地のなかから斉一な木を5~10本選んで,各々の木で平均的な発育をした新梢を10~20本とり,そのおのおのから1枚ずつ平均的な葉をとり,合計100枚となるようにする。葉中の養分含量は栄養状態によって変化するだけでなく,植物の種類や品種,生育時期,果樹などでは用いた台木の種類,果実収量気候病虫害などの有無で変化するので,これらに対する考慮をしたうえで,栄養状態の判定をする。表に各種果樹の窒素,リン,カリウム,カルシウム,マグネシウムの葉中の含有量の適量と不足量の例を示す。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「葉分析」の意味・わかりやすい解説

葉分析
ようぶんせき
leaf analysis

植物体の栄養状態を,葉の化学的成分を分析して診断する方法。土地養分の過不足による体内養分の変化が最も敏感に葉に現れる点に注目した方法で,おもに果樹栽培において施肥管理の参考とする。その方法は,発育正常な斉一な樹を5~10本選び,1樹から 10枚計 50~100枚ぐらいの葉数を試験材料にする。葉は樹冠の表面の生育中庸の不着果枝から,同齢の成葉をとる。その時期はウンシュウミカン,カキ7~9月,モモ6~7月,ナシ,ブドウ6~8月。それぞれ2~3回採葉する。葉分析の結果,樹木や果実の生育に必要な最低限の数値が,おもな元素について明らかになり,その対策も可能になる。

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