著作権の保護期間(読み) ちょさくけんのほごきかん

知恵蔵 「著作権の保護期間」の解説

著作権の保護期間

著作権が発生してから、その権利が消滅するまでの存続期間。日本の著作権法(2016年改正)では著作者の死後70年を経過するまでの間と定める。各国がそれぞれの国内法において定める権利であるため、開始の要件や存続期間などは相違があるが、日本では著作者の権利及びこれに隣接する権利に関し条約別段の定めがあるときは、その規定によると定められている。
著作権に関する国際条約には、ベルヌ条約(1887年発効)や万国著作権条約(同1955年)などがある。日本では、ベルヌ条約加盟のための法整備として1899年に著作権法(旧法)が制定され、小説などについての著作権の保護期間を死後30年とした。その後、ベルヌ条約の規定の変遷や各国の状況などに合わせて保護期間は死後38年まで延長され、1970年に新たに制定された著作権法では著作者の死後50年と定められた。旧法では発行後13年とされていた写真や記録映画などの保護期間も、他と同じく50年となった。映画は、その制作多数の人間が関わっていることから、著作権の発生を原則として公表のときとする。このため、書籍などの著作物よりも保護期間が短くなりがちである。しかも、製作費用は巨額にのぼるため、米国などの映画資本からは、より長期の保護期間を求める声が強く、米国では公表後95年にまで段階的に延長された。日本でも、2003年の著作権法改正で映画については公表後70年間に延長された。また、EU(欧州連合)も1993年に域内の保護期間に関する指令として70年を示した。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)締結に向けての動きが活発になると、この中で知的財産権の取り扱いも重要な課題となり、保護期間を欧州に揃え70年とする方向に進んだ。知的財産権の扱いを強く主張していた米国はTPPから離脱したが、この内容は残る11カ国によるTPP11に引き継がれた。2018年12月にTPP11が発効したことにより、16年に改正された著作権法が施行され、すべての著作物の保護期間が70年となった。なお、著作物の保護期間は、著作者が明らかなものはその死後70年間、団体名義のものや、映画などについては公表後70年となる。

(金谷俊秀 ライター/2019年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android