薄衣(読み)うすぎぬ

精選版 日本国語大辞典 「薄衣」の意味・読み・例文・類語

うす‐ぎぬ【薄衣】

〘名〙
① 地の薄い袿(うちき)、または打掛(うちかけ)。うすごろも。⇔厚衣
源氏(1001‐14頃)空蝉「かのうす衣は小袿(こうちき)のいとなつかしき人香に染(し)めるを」
義経記(室町中か)六「禅師は〈略〉うすぎぬも被(かづ)かず」
被衣(かずき)をいう女房詞。ひとえぎぬ。
説経節・説経苅萱(1631)上「三つになるちよつるひめを、めのとにいたかせ、うすきぬとってかみにをき」
③ 薄い衣を思わせるようなものをたとえていう。うすごろも。
青年(1910‐11)〈森鴎外二一「夕の薄衣(ウスギヌ)に次第に包まれて行く街を」

はく‐え【薄衣】

〘名〙 薄い着物。粗末な衣服。また、薄着すること。《季・夏》
太平記(14C後)一七「元より薄衣(ハクエ)なる人、飼事無りし馬共、此や彼に凍死で」

うすら‐ごろも【薄衣】

〘名〙 薄い衣服。うすぎぬ。うすごろも。
曾丹集(11C初か)「蝉の羽のうすらごろもになり行くになど打ちとけぬ山ほととぎす」

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デジタル大辞泉 「薄衣」の意味・読み・例文・類語

うす‐ぎぬ【薄衣】

薄い着物。うすごろも。
「かの脱ぎすべしたると見ゆる―を取りて」〈・空蝉〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

普及版 字通 「薄衣」の読み・字形・画数・意味

【薄衣】はくい

粗衣

字通「薄」の項目を見る

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「薄衣」の解説

うすごろも【薄衣】

小麦粉濃度の低い天ぷら衣。素材色合い風味などを生かした上品な天ぷらに仕上がる。⇔厚衣

出典 講談社和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の薄衣の言及

【張着】より

…室町時代のころから,宮廷に奉仕する身分の低い女性が,夏の衣料として用いた略装。その起りは薄衣(はくぎぬ)とよぶ,公家の女装としての簡略な袿(うちき)形の衣服の変化したものと考えられる。張着の形体は今日実物資料が残っていないため明らかでないが,小袖形の衣服で,これを小袖の上に重ねて用い,あるいは上半身を脱いだ形で腰にまとって用いたものと思われる。…

【服装】より

…湯巻は御湯殿奉仕の女官の着用したもので,裳のように下体に巻くものであったが,袴より身軽なところから,この時代に一般女官の服装として用いられ,文様,色目,地質など華美なものとなった。薄衣(はくぎぬ∥はつき)もこれと同様で,下﨟(げろう),雑仕(ぞうし)女などが袿の代りに使用し夏季に袖をはずして袴の代りに腰に巻いたので,腰巻と呼ばれた。武家の女装もこれと同様で,平安末期に始まる公家女装の簡略化は,この時代に入って武家の女装に引き継がれて,ようやく小袖は服装構成上の重要要素として表面に押し出されてくるようになった
[近世]
 応仁・文明の乱から世は戦国の乱世となったが,やがて江戸幕府によって新しい封建体制が確立された。…

【服装】より

…湯巻は御湯殿奉仕の女官の着用したもので,裳のように下体に巻くものであったが,袴より身軽なところから,この時代に一般女官の服装として用いられ,文様,色目,地質など華美なものとなった。薄衣(はくぎぬ∥はつき)もこれと同様で,下﨟(げろう),雑仕(ぞうし)女などが袿の代りに使用し夏季に袖をはずして袴の代りに腰に巻いたので,腰巻と呼ばれた。武家の女装もこれと同様で,平安末期に始まる公家女装の簡略化は,この時代に入って武家の女装に引き継がれて,ようやく小袖は服装構成上の重要要素として表面に押し出されてくるようになった
[近世]
 応仁・文明の乱から世は戦国の乱世となったが,やがて江戸幕府によって新しい封建体制が確立された。…

※「薄衣」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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