(読み)シン

デジタル大辞泉 「薪」の意味・読み・例文・類語

しん【薪】[漢字項目]

常用漢字] [音]シン(呉)(漢) [訓]たきぎ まき
たきぎ。「薪水薪炭采薪さいしん臥薪嘗胆がしんしょうたん

たき‐ぎ【薪】

き木の意》燃料にする細い枝や割り木。まき。「枯れ枝にする」「をくべる」
[類語]まき焚き物焚き付け

まき【薪】

燃料にするために適当な大きさに切って乾燥させた木。たきぎ。「をくべる」「割り」
[類語]たきぎ焚き物焚き付け

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精選版 日本国語大辞典 「薪」の意味・読み・例文・類語

まき【薪】

〘名〙 かまど、炉などに燃料としてたく細い枝や割木。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
※俳諧・炭俵(1694)上「きりぎりす薪(マキ)の下より鳴出して〈利牛〉 晩の仕事の工夫するなり〈岱水〉」

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改訂新版 世界大百科事典 「薪」の意味・わかりやすい解説

薪 (たきぎ)

かつての日本でいろりやかまどで燃やす薪はその多くを柴山などとよばれる入会(いりあい)山,共有林,屋敷林などから得てきたが,薪不足の家では〈そだ売り〉などの薪の行商から買い求めた。京都大原女(おはらめ)の薪売は頭上運搬でも有名であり,また大分県の吉四六話(きつちよむばなし)のなかには薪売をだます話もある。

 薪のなかでも火力の強い松は,刀鍛冶や陶業に必須のため,こうした地帯ではとくにアカマツが伐採され,はげ山が現れることもあった。薪には大木を割った〈まき〉と,小木の枝や葉を含めた柴や〈そだ〉がある。竹など音のするものなど,いろりで燃してはならない木が各地で伝えられている。これにはいろりを神聖視する信仰のほかに,灰をとるという実用的な意味もあった。灰は山村では栃の実などのあく抜きのほか,セッケンの代用などさまざまに使われた。またまたぎなど狩猟者の間にはどんな悪天候下でも,ハイマツの薪などを使って発火する方法が伝わっている。

 火に呪力を認めていた時代には,薪にも同様な力があると信じられていた。大晦日の晩,いろりで燃やす火をとくに〈年取りの火〉などとよび,このときにたく薪をショウガツギ(正月木),セチホダ,ヨツギホダ,トギなどといって暮に山からきって用意しておく。年の更新にあたって,いろりの火をとくに絶やさぬようにする風もあり,この薪や火種の管理には家の主婦があたった。夜ごと,オキに灰をかぶせて何代にもわたって火種を絶やさぬ村や家も各地にある。また,正月の初山入りに男が山に行ってをとってくる風も各地にある。薪に着火するにはコッパややにの多い肥松(こえまつ)が使われたが,後には杉やヒノキの薄片の端に硫黄(いおう)をつけた〈付木(つけぎ)〉が出まわった。付木は先ににおいの強い硫黄がついているので縁起物魔よけとされ,マッチが普及してからも贈答に使われた。また,修験者がたく護摩(ごま)木は,この火によってすべての罪障を焼きはらい,不動明王と一体化するなどといった象徴的な意味があり,これには土地ごとにカツギ(勝木)と称されている木が選ばれている。宮中での御竈木(みかまぎ)(御薪)の風習をはじめ,正月の神祭用の薪である年木(鬼木(おにぎ)や幸木(さいわいぎ)などともよばれる),竜宮水神に薪を与えるモティーフをもつ〈竜宮童子〉の昔話などからも,薪が単なる燃料ではなかったことがわかる。
燃料
執筆者:

薪 (まき)
firewood

木質燃料の慣用的な呼名樹木より作った燃料のうち,炭化,ガス化などが行われていないものを総称する。とくに大木を割ったものを,〈しば〉や〈そだ〉との対比で狭義に〈まき〉と呼ぶこともある。樹木を切って乾かしただけで使用するまきは,人間が火を使い始めたときからの燃料である。

 堅(かた)(ナラ類,カシ類,クヌギ),雑(その他の広葉樹),松(針葉樹),製材まきに区分され,束(そく)(長さ50cm×周囲70cm),棚(幅60cm×高さ150cm×長さ300cm)を単位として取引された。水分が多いこと,かさばること,比重が軽いなどの欠点があるが,1960年代まで地方都市,農山村の主燃料であった。発熱量は乾いた物で針葉樹4800kcal/kg,広葉樹4500kcal/kg前後である。まきには,材木を切って乾かしただけではなく,若干加工したものもある。例えば,薫薪(くんしん)は原木の水分をいぶしながら蒸発させ一部熱分解したもので,表面は褐色になり,樹木を切っただけのものより耐水性と保存性がよい。薫薪はとくにガス化用に適する。また,粉体となった木質を成形してつくったまきもある。日本のオガライト(商品名)はその代表的な例で,のこくずを主原料とし,チップくず,樹皮などの木材工業残廃材を加圧,加熱成形したものである。製品は角形,丸形で直径5~7cm,中心に1cmの穴がある。長さは35cm内外。比重は1.1~1.2,高発熱量4900kcal/kg,低発熱量4500kcal/kgである。棒状ではなくペレットタイプ(径7mm,長さ14mm)に成形したものもあり,自動化した木質燃焼器具の燃料として好まれている。
(たきぎ)
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百科事典マイペディア 「薪」の意味・わかりやすい解説

薪【まき】

燃料とする木材。薪には堅薪(クヌギ,ナラ,カシなどの材),雑薪(堅薪以外の広葉樹材),松薪(アカマツ,クロマツなどの材),杉薪(松薪以外の針葉樹材),ばた薪(製材くず)などの種類がある。発熱量は乾材で平均4500cal/gで,一般に針葉樹材のほうが大きい。日本では流体燃料の普及につれ,需要が激減。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【燃料】より

…爆発の危険性が液体や固体の燃料に比べて大きく,ガス中毒を起こす危険もある。【吉田 忠雄】
[燃料の文化誌]
 火の使用は人類の歴史の上できわめて大きな意義を有するが,燃料の主たるものは長い期間,薪であった。石炭や石油,ガスなど新しい燃料の普及が著しいとはいえ,今日でも薪を燃料にしている地域や社会は非常に多い。…

【薪】より

… 薪のなかでも火力の強い松は,刀鍛冶や陶業に必須のため,こうした地帯ではとくにアカマツが伐採され,はげ山が現れることもあった。薪には大木を割った〈まき〉と,小木の枝や葉を含めた柴や〈そだ〉がある。竹など音のするものなど,いろりで燃してはならない木が各地で伝えられている。…

※「薪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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