改訂新版 世界大百科事典 「薬用セッケン」の意味・わかりやすい解説
薬用セッケン(石鹼) (やくようせっけん)
medicated soap
おもに皮膚や傷口の消毒,不衛生な器具の洗浄などに用いられる洗浄剤。セッケンの名称ではあるが,いわゆる高級脂肪酸ナトリウム塩の洗浄用セッケンとは異なり,殺菌力,消毒効果をもつ点に特徴がある。植物油をケン化し,これをクレゾールに溶かしたクレゾールセッケン,ホルマリン水溶液に混ぜたホルマリンセッケン,また合成洗剤で,とくに陽イオン界面活性剤である逆性セッケンなどが代表的なものである。一般に市販品としては液状で供される。
なお近年,薬用セッケンという名称の固形セッケンが市販されているが,これはセッケンに殺菌剤を加えた製品で,セッケンの洗浄効果に加えて,皮膚の表面に生育する種々の細菌類の発育を阻止し,皮膚を清浄に保つ効果がある。フェノール,クレゾールに代わってビスフェノール系殺菌剤が開発されるとともに市場に出回るようになった。殺菌によって体臭を防ぐことからデオドラントセッケンdeodorant soap(防臭セッケン)ともいう。殺菌剤として配合される薬剤には,トリクロロカルバニリド,トリフルオロメチルジクロロカルバニリドなどがある。また肌荒れ防止などのためにアラントイン,グリチルリチン,ビタミン類などが配合されることもある。
執筆者:内田 安三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報