薬石(読み)やくせき

精選版 日本国語大辞典 「薬石」の意味・読み・例文・類語

やく‐せき【薬石】

〘名〙 (「石」は石鍼(いしばり)で、中国古代の治療器)
① 薬と石鍼。また、それを用いて治療すること。転じて、種々の薬品や治療法。また、薬。
※菅家文草(900頃)七・顕揚大戒論序「乍遭寝疾、薬石無験」
※妾の半生涯(1904)〈福田英子〉五「妾と同病に罹り、薬石(ヤクセキ)効なく遂に冥府の人となりけるなり」 〔黄庭堅‐次韻定国聞蘇子由臥病績渓詩〕
② 身のための益となる物事、ことば。
※本朝文粋(1060頃)二・答貞信公辞関白表勅〈菅原文時〉「毎憶薬石之至言。唯望霧露之永散」 〔春秋左伝‐襄公二三年〕
③ 仏語。禅家で、非時食の制を守って昼以後、食事をしなかったため、飢えや寒さを防ぐのに腹部に抱いて温めた石のこと。後には、夜食としてとった粥(かゆ)または夕食をいう。
正法眼蔵(1231‐53)示庫院文「乃仏祖会下の薬石也」
金閣寺(1956)〈三島由紀夫〉一「薬石(ヤクセキ)と呼ばれる夕食を御馳走になり」 〔禅苑清規‐一・護戒〕

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デジタル大辞泉 「薬石」の意味・読み・例文・類語

やく‐せき【薬石】

《「石」は「いしばり」で、古代の医療器》
いろいろの薬や治療法。「薬石効なく永眠する」
身のためになる物事のたとえ。「薬石の言」
禅寺で、非時ひじの戒を守って夕食をとらなかったため、飢えや寒さをしのぐために温石おんじゃくとして腹に当てた石。転じて、夜食のかゆまたは夕食。

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普及版 字通 「薬石」の読み・字形・画数・意味

【薬石】やくせき

薬。漢・枚乗〔七発〕今、太子石針刺、灸(きう)もて療(いや)すこと無(なか)るべきのみ。言妙を以て、きて去(のぞ)くべきのみ。

字通「薬」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の薬石の言及

【雲水】より

…臨済禅での独参は,雲水が師から公案をもらい,その所解を呈するところであり重視される。粥坐(しゆくざ)(朝食),斎坐(昼食),薬石(やくせき)(夕食)と称する食事は,行鉢(ぎようはつ)と称する禅門の食事作法で行う。入浴(開浴(かいよく))は,四九日(しくにち)(4と9の日)に行う。…

※「薬石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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