薬食(読み)くすりぐい

精選版 日本国語大辞典 「薬食」の意味・読み・例文・類語

くすり‐ぐい ‥ぐひ【薬食】

〘名〙
① 冬に、保温滋養のために猪、鹿などの肉を食べること。普通、獣肉は穢(けがれ)があると忌んで食べなかったが、病人などは薬と称して食べた。《季・冬》
※俳諧・毛吹草(1638)二「霜月〈略〉薬ぐひ」
浮世草子・好色一代男(1682)三「干鮭(からさけ)霜先の薬喰(クスリグヒ)ぞかし」
② 病気の養生などのために、からだにとって栄養になるものを食べること。〔日葡辞書(1603‐04)〕
歌舞伎絵本合法衢(1810)四幕「ちっと麦飯も、また薬食(クスリグ)ひだわな」
③ (肉を食べる意から転じて) 交合をいう。
※浮世草子・色里三所世帯(1688)下「此君おりおり薬喰(クスリクヒ)に薄して一きれづつ壱ケ月に七夜づつあふ物ならば不老不死の腎薬是ぞ」

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普及版 字通 「薬食」の読み・字形・画数・意味

【薬食】やくしよく

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世界大百科事典(旧版)内の薬食の言及

【肉食】より

… だが,たび重なる禁令の発布は,まず貴族階級や都市民の間に獣肉食一般を罪悪視する感覚を醸成し,やがて日本人の多くが肉食を穢(けがれ)として,その忌避に傾いていったようである。そして,元来は薬草採取などを意味した薬猟(くすりがり)の語が野獣の捕獲の意にも拡大され,獣肉の食用を薬食(くすりぐい)とも呼んで,それに免罪符的な役割をもたせるようにもなった。《今昔物語集》などにはしばしば獣肉を煮炊きするにおいを〈くさい〉と表現しており,それは肉食忌避から進んで肉食嫌悪が拡大したことの証左と思われるが,そうした中でも《文徳実録》に見える藤原長良(ふじわらのながら)などのような肉食愛好者も,当然ながらたえず存在していた。…

【ももんじ屋】より

…牛馬などの家畜は食用にすべきではないとする観念は強かったが,それらも当然売られていたと思われる。薬食(くすりぐい),つまり保健,治病をうたって,店主はその薬効を説いたものらしく,〈けだもの屋藪医者程は口をきき〉(《柳多留》第3編)という川柳がある。また,蕪村に〈くすり喰人に語るな鹿ヶ谷〉の句があるので,京都にも同種の店があったようである。…

※「薬食」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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