虎の子渡し(読み)とらのこわたし

精選版 日本国語大辞典 「虎の子渡し」の意味・読み・例文・類語

とら【虎】 の 子渡(こわた)

(虎が三匹の子を生むと、その中には必ず彪(ひょう)が一匹いて、他の二匹を食おうとするので、渡河の際に親は子を彪と二匹だけにしないように苦労するという、「癸辛雑識‐続集下」にみえる話から出た語。親はまず彪を背負って対岸に渡し、次にもう一匹を背負って渡した帰りに彪を背負って戻り、残りの一匹を渡したあとで、また彪を背負って渡るという)
① 親虎が三匹の子をつれて川を渡るさまに形どった庭石の配置。京都龍安寺の石庭など。
※俳諧・江戸十歌仙(1678)六「愛をなすなる懐の谷〈泰徳〉 有(あり)とかや虎の子渡し麓川〈春澄〉」
② 苦しい生計のやりくり。無理算段
※浮世草子・西鶴置土産(1693)四「其蔵なから質に置き、虎(トラ)の子わたしにはし給へども」
碁石などを用いてする遊び。
※男重宝記(元祿六年)(1693)三「手なぐさみには、十六目石、十不足、〈略〉虎子渡(トラノコワタシ)
④ 次々に手渡すこと。リレー式に人手に渡ること。
浄瑠璃・頼政追善芝(1724)一「そんじょそこからもう爰へと、虎(トラ)の子渡しの注進(ちうしん)に」
馬術秘伝の一つ。馬に乗って梯子(はしご)の上を渡る術。
※浄瑠璃・綱金時最後(1661頃)一「七よう八よう九ようのほしをへうして、ごばんのり、はしごの上のとらの子わたし」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「虎の子渡し」の意味・読み・例文・類語

とらわた

《虎が子を3匹生むと、その中には必ずひょうが1匹いて他の2匹を食おうとするので、川を渡る際に子を彪と2匹だけにしないよう子の運び方に苦慮するという「癸辛雑識」続集・下にみえる故事から》生計のやりくりに苦しむことのたとえ。

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