家庭医学館 「虫刺症/痒疹」の解説
ちゅうししょうようしん【虫刺症/痒疹 Insect Bite / Prurigo】
ふつう、昆虫の吸血による皮膚病をさして虫刺症といいます。
虫の刺し口に一致して、大変かゆい淡紅色から紅色の丘疹(きゅうしん)ができます。刺されてからまもなくは、じんま疹のような皮疹(ひしん)が広範囲にできる反応をおこします。
小さい子どもほど症状が現われるまでに時間がかかり(24時間以後)、反応も激しいことがあります。ひどい場合は、水ぶくれをつくることがあります。やがて、小さなかたいしこりになって残ると、ストロフルス(急性痒疹(きゅうせいようしん)ともいう)と呼ばれる状態になります。
一方、かき続けると、結節性痒疹(けっせつせいようしん)という、数年以上続くしこりに変化することがあります。
痒疹には、このほかにアトピー性皮膚炎(「子どものアトピー性皮膚炎」)によるものや、原因のはっきりしない多形慢性痒疹(たけいまんせいようしん)などがあります。
[原因]
今の日本では、一般的に虫刺されといえば、カ(蚊)やダニがいちばん多い原因です。最近のペットブームとともに、ノミに刺される人も多く、もっとも多くみられるものが、ネコノミやイヌノミといった、ペットや野良ネコについている種類のノミです。
吸血とは異なりますが、公園や庭のツバキの木などについている毛虫(ガの幼虫)の毒針毛が刺さると、いっぺんに多数の刺され方をします。
また、海山に行くとブユに刺されることが多くなります。その他の原因として、比較的少なくなったものはシラミ、ナンキンムシなどです。
[検査と診断]
ふつうは検査を必要としません。しかし、カ(蚊)アレルギーという特殊な場合には詳しい検査をして確認する必要があります。このカアレルギーの典型的な症状は、カに刺されると40℃近い高熱が出て、刺された箇所は水ぶくれになり、やがては深い潰瘍(かいよう)と黒いかさぶたをつくります。この場合は、基礎に免疫異常や悪性腫瘍(あくせいしゅよう)がないかどうかを検査する必要があります。
[治療]
塗り薬が治療の主役になります。抗ヒスタミン薬、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン、抗生物質の外用剤などを、症状に合わせて使い分けます。
刺された箇所をかかないようにすることが重要なので、初期には回数も多めに塗り、がまんできないときには通気性のよいガーゼや包帯でおおいます。
刺し口やかいた傷から細菌が繁殖しやすいので、石けんでよく洗い、乾いたらすぐ薬を塗ることがたいせつです。
患部が腫(は)れている場合には、冷湿布をし、炎症をなるべく抑えてかゆみを楽にします。
強いかゆみには、抗ヒスタミン薬を内服したほうがよいでしょう。
なかなか治らず、しこりになってしまった場合には、専門医(皮膚科)に相談します。この場合には、少しよくなったからといって、自己判断ですぐ治療を中止してはいけません。根気よく続けることが、本当の治癒への近道となります。