蜀江の錦(読み)しょっこうのにしき

精選版 日本国語大辞典 「蜀江の錦」の意味・読み・例文・類語

しょっこう【蜀江】 の 錦(にしき)

上代錦の一つ。緯(よこいと)に色糸を用いて文様を表わした錦で、赤地に連珠文をめぐらした円文の中に花文・獣文・鳥文などを織り出したもの。奈良時代、中国から渡来したもので、現在法隆寺に伝えられる。蜀江で糸をさらしたと伝えるところからこの名がある。
※法性寺関白御集(1145か)浮水落花多「巴峡紅粧流不尽。蜀江錦彩濯彌新」
② 中国明代を中心にして織られた錦。日本には多く室町時代に渡来。八角形の四方正方形を連ね、中に花文、龍文などを配した文様を織り出したもの。この文様を蜀江型といい、種々の変形がある。
※源平盛衰記(14C前)二八「蜀江(ショッカウ)の錦(ニシキ)鎧直垂(よろひひたたれ)に、金銀金物、色々に打くくみたる鎧著て」
③ 京都の西陣などで、蜀江型を模して織り出した錦。
※浮世草子・新可笑記(1688)一「蜀江(ショクコウ)のにしきの掛幕ひかりうつりて銀燭ほしのはやしのごとく」
[補注]平安朝の漢詩文では花や紅葉を「錦」にたとえる際に、この蜀江(錦江)の錦でもってすることが、しばしば行なわれた。

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デジタル大辞泉 「蜀江の錦」の意味・読み・例文・類語

しょっこう‐の‐にしき〔シヨクカウ‐〕【×蜀江の錦】

《蜀江の水で糸を染めて織ったと伝えられるところから》古代中国の蜀の成都産の精巧な錦。緋地に黄・藍・緑などを交えて、連珠円または格子内に花文・獣文・鳥文などを配した文様のもの。また、主に明代に織られた、八角形の四方に正方形を連ね、中に花文・竜文などを配した文様のもの。蜀錦しょっきん
京都の西陣などで、蜀江文を模して織り出した錦。

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