蜘蛛の糸(読み)くものいと

精選版 日本国語大辞典 「蜘蛛の糸」の意味・読み・例文・類語

くも【蜘蛛】 の 糸(いと)

蜘蛛が腹面紡績突起から出す細い糸。紡績突起の奥にある紡績腺から分泌された粘液空気にふれて凝縮し、糸となる。この糸を縦横にはって昆虫を捕えたりする。また、測量用望遠鏡の十字線などに利用したりする。

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デジタル大辞泉 「蜘蛛の糸」の意味・読み・例文・類語

くものいと【蜘蛛の糸】[作品名]

歌舞伎舞踊常磐津ときわず本名題蜘蛛糸梓弦くものいとあずさのゆみはり」。金井三笑作詞、初世佐々木市蔵作曲。明和2年(1765)江戸市村座初演土蜘蛛の精が、切り禿かむろの少女・仙台座頭・山伏と変化するところが眼目。
芥川竜之介短編小説。大正7年(1918)「赤い鳥」誌に発表。悪党カンダタが、釈迦しゃかが天から下ろした蜘蛛の糸にすがって極楽へと上るが、我欲のために再び地獄へと落ちる。

くも‐の‐いと【蜘蛛の糸】

クモの出す糸。出糸腺から出る粘液が大気に触れて糸状となったもの。測量用望遠鏡の十字線などに利用される。 夏》
[補説]作品名別項。→蜘蛛の糸

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「蜘蛛の糸」の意味・わかりやすい解説

蜘蛛の糸
くものいと

歌舞伎舞踊曲。常磐津。本名題『蜘蛛糸梓弦 (あずさのゆみはり) 』。明和2 (1765) 年江戸市村座で『降積花 (ふりつむはな) 二代源氏』の1番目大切所作事として初演。作詞金井三笑,作曲佐々木市蔵。土蜘蛛を9世市村羽左衛門が演じ,1世常磐津文字太夫が出語りをつとめた。文字太夫の代表曲であり,能『土蜘蛛』や古浄瑠璃を経て歌舞伎舞踊に取入れられた,いわゆる土蜘蛛物の最古の曲。源頼光にとりついて殺そうとする土蜘蛛の精が,宿直する渡辺綱と坂田金時の前に切禿 (きりかむろ) ,座頭,山伏と化けて登場し,幕切れには正体を現すというもの。これを改訂した曲に『来宵蜘蛛線 (くべきよいくものいとすじ) 』がある。天保8 (1837) 年江戸中村座初演。3世桜田治助作,4世岸沢式佐作曲。切禿に代えて傾城とした。明治に入ってさらにこれを改めたものが,3世河竹新七による改作『蜘蛛宿直噺 (くものいとおよづめばなし) 』である。 1889年東京千歳座初演。今日ではこの曲が舞踊に用いられ,切禿,座頭,傾城と変ることが多い。全体の構成は,100本のろうそくを1本ずづ消しながら行われる怪談会「百物語」の趣向となっている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蜘蛛の糸」の意味・わかりやすい解説

蜘蛛の糸
くものいと

歌舞伎(かぶき)舞踊劇。常磐津(ときわず)。本名題(ほんなだい)『蜘蛛糸梓弦(くものいとあずさのゆみはり)』。金井三笑(さんしょう)作。初世佐々木市蔵作曲。1765年(明和2)11月、江戸・市村座で9世市村羽左衛門らにより初演。顔見世狂言『降積花(ふりつむはな)二代源氏』の一番目大詰で、土蜘蛛(つちぐも)の精が切禿(きりかむろ)のお茶汲童(ちゃくみわらべ)、仙台座頭、山伏と次々に化けて源頼光(らいこう)の寝所を襲うが、梓巫女(あずさみこ)に見顕され、坂田公時(さかたのきんとき)、碓井貞光(うすいさだみつ)に退治されるという筋。「土蜘蛛物」の舞踊劇としても、現存する常磐津曲としても最古の作。後世、改訂作が多く生まれ、現代では3世河竹新七作『蜘糸宿直噺(くものいとおよづめばなし)』(1889)が流行。土蜘蛛が切禿・仙台座頭・傾城(けいせい)の3役に化ける趣向で、座頭の仙台浄瑠璃(じょうるり)のくだりは原曲のままで眼目になっている。

[松井俊諭]

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「蜘蛛の糸」の解説

蜘蛛の糸
(通称)
くものいと

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
蜘蛛糸幼稚問答 など
初演
天明4.11(江戸・森田座)

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