(読み)マムシ

デジタル大辞泉 「蝮」の意味・読み・例文・類語

ま‐むし【×蝮】

《「真虫」の意》クサリヘビ科の毒蛇体長約70センチで、灰褐色の地に銭形の斑紋が並ぶ。頭は三角形で両ほおに毒腺をもち、敵が防衛範囲内に入ると毒牙を立てて飛びかかる。毒性は強いが注入量は少ない。卵胎生くちばみ。はみ。日本まむし 夏》曇天や―生き居るびんの中/竜之介
恐れきらわれる人をたとえていう。
まむし指」の略。
[類語]くちなわ長虫大蛇だいじゃ大蛇おろちうわばみ毒蛇錦蛇青大将縞蛇ヤマカガシがらがら蛇波布コブラ海蛇盲蛇

くち‐ばみ【×蝮】

《「くちはみ」とも》マムシ古名
「―にされたる人」〈徒然・九六〉

はみ【×蝮】

マムシ別名

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「蝮」の意味・読み・例文・類語

ま‐むし【蝮】

〘名〙
① (「真虫」の意) 有鱗目クサリヘビ科の毒ヘビ数種の総称。ニホンマムシ、ツシママムシ、ウスリーマムシなどがいる。
② クサリヘビ科の毒ヘビの一種。特にニホンマムシをさす。全長約六〇センチメートルに達する。頭は三角形で、くびは細く、尾部は細くて短い。体色はふつう灰褐色の地に暗褐色の輪状の斑紋(はんもん)が並ぶが、俗にアカマムシと呼ばれる赤褐色型もある。毒牙は管牙で、かまれたときは早期に血清注射をすれば死ぬことはまれである。対馬や南西諸島を除く日本各地に分布。水辺に近い草むらを好み、ネズミ・カエルなどを捕食。卵胎生。古くから蝮酒、黒焼などにして薬用にされる。くちばみ。はみ。たじひ。《季・夏》
※玉葉‐寿永三年(1184)正月一四日「凡昔も今も真虫海より打上らるる事は」
※我鬼句抄(1917‐19)〈芥川龍之介〉夏「曇天や蝮生き居る罎の中」
③ 他人に恐れきらわれる人にいう語。蛇蝎(だかつ)
※俳諧・野の錦(1767)「ああままと・まむしの中へ嫁入して」
④ 「まむしゆび(蝮指)」の略。
御触書寛保集成‐四八・貞亨五年(1688)八月「手の大指両方共まむしかかり」

くち‐ばみ【蝮】

〘名〙 (古くは「くちはみ」) 「まむし(蝮)」の異名
※名語記(1275)三「くちはみといへる虫を、ただはみともいへり」
徒然草(1331頃)九六「くちばみにさされたる人、かの草を揉みて付けぬれば、則ち癒ゆとなん」
[語誌](1)「蝮」の名称は「本草和名」「観智院本名義抄」「十巻本和名抄」などにみえる「ハミ」が古い。「ハミ」は蛇の一般称「ヘミ」と音形が類似するものの、別の語源と考えられる。
(2)「クチハミ」は蝮の名称「ハミ」と無毒の蛇の一般称「クチナワ」の「クチ」とが熟合して成立したとみられる。「易林本節用集」には「クチハメ」という異形もあり、「運歩色葉集」には「クチバミ」も挙げるが、おおむね中世末まで第三音節は清音とみられる。

たじひ たぢひ【蝮】

〘名〙 「まむし(蝮)」の古名。
[補注]反正天皇の名として、「古事記」に「蝮(たぢひの)水歯別命」とあり、「日本書紀」に「多遅比(タヂヒの)瑞歯別天皇」とあるところから認められる語。また、「延喜式」には、「凡勘籍之徒、或転蝮部姓丹比部」という記事がみえる。→たじひ(虎杖)

はみ【蝮】

〘名〙 「まむし(蝮)」の異名。〔本草和名(918頃)〕

たちひ【蝮】

〘名〙 ⇒たじひ(蝮)

くち‐はめ【蝮】

〘名〙 「くちばみ(蝮)」の変化した語。〔易林本節用集(1597)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「蝮」の解説

蝮 (マムシ)

動物。クサリヘビ科マムシ亜科マムシ属に含まれるヘビの総称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android