蟄居(読み)ちっきょ

精選版 日本国語大辞典 「蟄居」の意味・読み・例文・類語

ちっ‐きょ【蟄居】

〘名〙
昆虫などが冬眠のために地中にこもっていること。また、その場所
太平記(14C後)二〇「龍は陽気に向かひては威を震ひ、陰の時に至りては蟄居(チッキョ)閉づ
② 家の中にとじこもって外へ出ないこと。また、田舎にしりぞいていること。蟄屈。隠居
※九暦‐九条殿記・大臣家大饗・承平六年(936)正月四日「仍今日蟄居簾中」
※評判記・色道大鏡(1678)一五「中国に蟄居(チッキョ)したりけるが」
江戸時代武士公卿に科した刑の一つ。閉門を命じた上、さらに一室に謹慎させること。特に終身の場合を永蟄居という。
※百一録‐寛文一三年(1673)一〇月五日(古事類苑・法律四〇)「極臈〈慈光寺源冬仲〉差次〈中原師庸押小路大外記〉可蟄居之由、中院殿亭にして被仰渡

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デジタル大辞泉 「蟄居」の意味・読み・例文・類語

ちっ‐きょ【×蟄居】

[名](スル)
家の中にひきこもっていること。「終日蟄居して書に親しむ」
江戸時代、武士に科した刑罰の一。自宅一定の場所に閉じ込めて謹慎させたもの。終身のものは永蟄居という。
虫などが冬眠のため地中にこもっていること。
「竜は…陰の時に至りては―を閉づ」〈太平記・二〇〉
[類語]籠城籠居

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改訂新版 世界大百科事典 「蟄居」の意味・わかりやすい解説

蟄居 (ちっきょ)

家にこもって謹慎させる刑罰の一種。中世公家武家では謹慎あるいは不満の表明として蟄居することもあり,また刑としても行われた。江戸時代にも公家・武家等に例外的な刑罰として行われた。岩倉具視は1862年(文久2)和宮降嫁を推進したことから尊攘派の糾弾するところとなり,辞官蟄居を命ぜられた。1792年(寛政4)《海国兵談》を著した林子平は兄嘉膳方に引き渡し在所において蟄居を命ぜられた。その他著名な事件としては,1839年(天保10)蛮社の獄に連座した渡辺崋山は主人家来に引き渡し在所において蟄居を命ぜられ,54年(安政1)佐久間象山,吉田松陰などもこの刑をうけた。59年水戸藩主徳川斉昭は将軍家定の継嗣をめぐって大老井伊直弼と対立し永蟄居を命ぜられたが,翌年危篤のゆえをもって免ぜられた。76年の華族懲戒法は蟄居の懲戒をおいたが,85年には除族と改められ,蟄居の制はなくなった。
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百科事典マイペディア 「蟄居」の意味・わかりやすい解説

蟄居【ちっきょ】

江戸時代,公家武士に科された監禁刑。一室に拘禁謹慎させる。蟄居,永蟄居,蟄居隠居(単に隠居とも)の別があり,永蟄居は終身刑,蟄居隠居は引退させ子孫に家督を譲らせた。→刑罰
→関連項目池田騒動

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蟄居」の意味・わかりやすい解説

蟄居
ちっきょ

自宅の一室に謹慎させる刑。江戸時代において、士人以上について行われたが、江戸幕府の公事方御定書(くじかたおさだめがき)にはこの刑は規定していない。謹慎・閉門の刑が門を閉じて出入りを禁じたのに対し、蟄居は閉門のうえ一室に籠(こも)ることを命じた。1792年(寛政4)に仙台藩士林子平は奇怪異説等の著述をしたというので、兄嘉膳方に引き渡され、在所において蟄居を命ぜられ、1839年(天保10)には渡辺崋山(かざん)が蛮社の獄に座して捕らわれ、国元の田原に蟄居を命ぜられている。

[石井良助]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「蟄居」の解説

蟄居
ちっきょ

中世~近世の武士や公家に科せられた刑罰。謹慎のため自宅にこもること。通常は領主などから命じられて謹慎することをさしたが,みずから自宅で謹慎して刑の宣告を待つ場合や不平不満がつのり進んで自宅に閉じこもることも称した。中世では,他の刑が付加される場合が多く,近世では,蟄居・蟄居隠居(押隠居)・永蟄居などの種類があった。江戸後期に林子平や渡辺崋山らが蟄居に,徳川斉昭が永蟄居に処せられた事例が有名。1870年(明治3)の新律綱領の頒布により行われなくなった。

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普及版 字通 「蟄居」の読み・字形・画数・意味

【蟄居】ちつきよ

閉居する。

字通「蟄」の項目を見る

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