蟻通明神(読み)アリドオシミョウジン

デジタル大辞泉 「蟻通明神」の意味・読み・例文・類語

ありどおし‐みょうじん〔ありどほしミヤウジン〕【蟻通明神】

大阪府泉佐野市長滝にある神社祭神大名持命おおなむちのみこと枕草子に、その由来がみえる。蟻通神社

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精選版 日本国語大辞典 「蟻通明神」の意味・読み・例文・類語

ありどおし‐みょうじん ありどほしミャウジン【蟻通明神】

大阪府泉佐野市長滝にある神社。旧郷社。正称蟻通神社。祭神は大名持命(おおなもちのみこと)。唐の国から日本人の才を試そうと、幾重にも曲がった玉に緒を通すようにとの難題が出された時、老人の指図に従い、蟻に糸を結びつけて通し、解決した。以後、それまであった棄老(きろう)習慣をやめ、この老人を神としてまつったと「枕草子」にある。また「貫之集」などに、紀貫之和歌を手向けると瀕死の馬が治った話が見える。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「蟻通明神」の意味・わかりやすい解説

蟻通明神
ありとおしみょうじん

奈良県を中心として伝承される叙事伝説の一つ。昔話では「姥捨山(うばすてやま)」に含まれる一モチーフとなっている。また、この伝説を縁起とするのが、大阪府長滝村(現泉佐野市)にあるこの神の神社である(奈良県吉野郡の丹生(にう)川上神社も元蟻通明神として同じ伝説を備える)。昔、老人を野山に捨てさせたが、中将某は老いた両親を捨てきれず隠して孝を尽くす。あるときに唐帝が日本を攻めんとして、種々の難題を課し、そのなかに「七曲の穴のある玉に紐(ひも)を通せ」という課題があった。中将は両親の知恵によって、蟻に細糸を結び、玉の出口に蜜(みつ)を塗って、通すことができたので、攻められずにすんだ。棄老習俗は廃され、中将は大臣となり死んで神となる。

 謡曲四番目物の『蟻通』は、蟻通明神の神域で紀貫之(きのつらゆき)の馬が倒れたために、歌を詠んで、神の物咎(ものとが)めを治めた故事となっている。和歌の徳が神の怒りを鎮める主題である。この類話の原型が蟻通説話としてもてはやされていたことがわかる。『枕草子(まくらのそうし)』244段には、「社(やしろ)は」の条に続いて、この蟻通縁起を詳しく記しているし、『大鏡』昔物語には貫之の逸話を語る(そのほか俊秘抄(しゅんぴしょう)』上、『袋草子』4、『神道集』7の38、『本朝神社考』も同じ)。江戸期の長唄(ながうた)『蟻通』は、1775年(安永4)江戸・森田座に上演されたが現存していない。インドの『ジャータカ』にも類話がある。

[渡邊昭五]

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