血管内凝固症候群(読み)けっかんないぎょうこしょうこうぐん(英語表記)disseminated intravascular coagulation syndrome

改訂新版 世界大百科事典 「血管内凝固症候群」の意味・わかりやすい解説

血管内凝固症候群 (けっかんないぎょうこしょうこうぐん)
disseminated intravascular coagulation syndrome

略称DIC。播種性血管内凝固症候群ともいう。広範な血管内で血液の凝固が起こる状態。血液は,血管内を循環している間は,通常,凝固しないものであるが,血管壁の変化,凝固促進物質の血管内への出現などで,血管内でも血液凝固が起こることがある。凝固によって生じた塊が血栓であり,それが局所にとどまる場合は血栓症であるが,全身に広範に血管内凝固が起こり,微小血栓が散布されたような状態が起こると,血管内凝固症候群と称する。すでに存在している各種の疾患が原因となって起こり,原因疾患としては,癌,白血病,重症感染,産科的疾患など多種にわたる。微小血栓による各種臓器の循環障害と,血管内凝固によって血小板をはじめとする各種凝固因子が消費されてしまったために起こる出血傾向が,主要な症候である。また,小血栓をとかそうとして起こる繊維素溶解の亢進も,出血傾向の出現を助長する。治療としては,原因となった疾患と病態の治療・改善と,血液凝固を抑制するヘパリンあるいはその他の薬物などの投与が行われる。
出血
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「血管内凝固症候群」の意味・わかりやすい解説

血管内凝固症候群
けっかんないぎょうこしょうこうぐん
disseminated intravascular coagulation syndrome

DICとも呼ばれ,感染症や癌,広範囲の熱傷,外傷などに伴い,血管内で凝固機能が異常に亢進し,全身の毛細血管で血液凝固が発生することにより起る。このとき,凝固因子と血小板は大量に消費され,欠乏,出血傾向が強まる。同時に各臓器は虚血のために機能不全となり,腎不全呼吸不全肝不全などが一斉に出現し,互いに影響を及ぼして多臓器不全 (MOF) と呼ばれる状態になる。出血については初期の皮膚出血から消化管出血頭蓋内出血も生じる。 DICに陥ると生命の危険はきわめて高いが,原因疾患が継続する間の改善は困難である。

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世界大百科事典(旧版)内の血管内凝固症候群の言及

【胎盤早期剝離】より

妊娠【岩崎 寛和】。。…

※「血管内凝固症候群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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