表具表装(読み)ひょうぐひょうそう

改訂新版 世界大百科事典 「表具表装」の意味・わかりやすい解説

表具・表装 (ひょうぐひょうそう)

書蹟や絵画などの鑑賞や保存のため,裂地(きじ)や紙などを補って,掛軸,額,屛風,襖,衝立巻物,冊子,帖など各種の形式に仕立てることをいう。奈良・平安時代には装潢(そうこう)といい,おもに経巻の表装が行われた。鎌倉時代に入ると裱褙(ひようほえ)と呼ばれ,書画の表装を専門に行う裱褙師が出現し,経巻の表装には経師きようじ)が当たった。室町時代には,唐絵や禅林墨蹟を唐織(からおり)などを用いて,書院床の間(当時は押板(おしいた)と称す)における鑑賞用に仕立てられ,書画の選択や表装の演出には同朋衆(どうぼうしゆう)(阿弥派)がこれに当たった。その際,金襴(きんらん)や緞子(どんす)など中国の織物を用いたのは,装飾性のほかに,禅僧祖師着用の袈裟をもって墨蹟を表装することは,墨蹟そのものを祖師自身として尊崇するための荘厳(しようごん)の意味もあり,唐織の取合せによる新しい意匠を発達させたのである。桃山時代に至って表具という言葉が用いられるようになり,奈良屋西順らの表具師が現れた。とくに掛物の表装はしだいに多様化し,裱褙(真),幢褙(どうほえ)(行),輪褙りんほえ)(草)の3種に分類されている(現在,表補,幢補,輪補と称されている)。裱褙は本尊表具,神聖表具と呼ばれ,仏画,題目神像,神号などに用いられ,幢褙は座敷表具,大和表具として宸翰,古筆,絵画などに用いられ,輪褙は茶掛表具と呼ばれている。《石州三百ヶ条》には輪褙(真)はないが,《正伝集》には〈真〉を設けて〈左右の縁に一文字の切(きれ)をほそく切ってまはしたるを真の輪褙と云也〉としている。このほか表具の形式には,見切表具,袋表具,明朝(みんちよう)仕立て,台表具,刳抜表具,円窓,柱隠,唐表具などがあり,俗称も多い。
掛物
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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