衵扇(読み)あこめおうぎ

精選版 日本国語大辞典 「衵扇」の意味・読み・例文・類語

あこめ‐おうぎ ‥あふぎ【衵扇】

〘名〙 極彩色吉祥文様を表現し、金銀泥で装飾した泥絵檜扇(ひおうぎ)一種親骨上部糸花をつけ、色糸の飾り紐を垂らす。衵姿の童(わらわ)所用による称。形状類似から女房所用の泥絵の檜扇をいう。〔類聚名物考(1780頃)〕

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デジタル大辞泉 「衵扇」の意味・読み・例文・類語

あこめ‐おうぎ〔‐あふぎ〕【×衵扇】

宮廷女房礼装のときに用いた檜扇ひおうぎ草木人物などの絵を描き、切り箔砂子などを散らした。近世以降は、両端の親骨の上部に糸花をつけ、色糸を長く垂らす。

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百科事典マイペディア 「衵扇」の意味・わかりやすい解説

衵扇【あこめおうぎ】

平安時代男子檜扇(ひおうぎ)に対して姿の宮廷女子が持った扇。ヒノキ薄板を彩糸(いろいと)でとじ,絵を描いたもの。近世には板の数は39枚となり,これに山水瑞鳥などの金銀泥絵(でいえ)を描き,親骨からは彩糸の余りを長くたらし,そのもとに松,梅,タチバナなどの糸花飾りをつけるようになった。
→関連項目

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「衵扇」の意味・わかりやすい解説

衵扇
あこめおうぎ

扇の一種で,宮廷女性が正装に用いた扇をいう。まれに貴族の少年が持ったこともある。ひのき,または杉の薄板を連ねて扇をつくり,表裏に極彩色の絵を描き,両端に長い飾り紐をつけた。佐太神社,厳島神社などに平安時代の遺品がある。近世に入って板の数は 39枚と定められ,糸花や飾り金具が加わって,大翳 (おおかざし) と呼ばれた。

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世界大百科事典(旧版)内の衵扇の言及

【衵】より

…それがのちには女装の表着にもなり,童女や一般の日常にも着用された。(3)衵扇と書いて〈あこめおうぎ〉,あるいはたんに〈あこめ〉とよんだものがあった。男子が用いる檜扇(ひおうぎ)と同様に,衵姿の女性が持ち,ときには高貴の子弟である少年も用いた。…

【扇】より

…なお近世にいたっては橋数は39枚,これに花樹,山水,瑞鳥などの金銀泥絵を描き,親骨からは白,紅,紫,薄紅,黄,青などの組糸をたらし,そのもとに松,梅,橘などの造花をつけた純儀式的なものとなった。この女子の檜扇を一名衵扇(あこめおうぎ)ともいう。
[蝙蝠扇(かわほりおうぎ)]
 紙扇も平安時代に極度に発達し,これが檜扇とともに中国に渡り,さらに中国からヨーロッパにひろまっていった。…

※「衵扇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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