被用者年金一元化(読み)ひようしゃねんきんいちげんか

知恵蔵 「被用者年金一元化」の解説

被用者年金一元化

年金の官民格差を是正するため、サラリーマンの厚生年金と、公務員の共済年金統合して一元化すること。政府は2007年4月に年金一元化法案を決め、国会に提出した。その柱は(1)10年度に国家公務員、地方公務員、私学教職員の共済年金を廃止し、公務員らも厚生年金に加入させる(2)公務員は18年度、私学は27年度までに保険料率を厚生年金と同じ18.30%にそろえる(3)公務員だけにある職域加算は10年に廃止し、代替措置として公務員のための新たな上乗せ措置を検討する(4)旧恩給部分として共済に投入している税金の追加費用は原則27%削減する(ただし削減額は年収の10%を上限とする)(5)標準報酬の決定や保険料の徴収年金給付裁定のため、これまでの共済組合の事務組織を活用する(6)共済の積立金52兆円のうち28兆円は一元化のために拠出するが、残りは共済側が持ち続け、職域加算の確定分の給付や新しい上乗せ年金の補填(ほてん)に充てる、などだ。追加費用の削減は恩給期間のある退職者に限られ、積立金も半分は自分たちの分として温存するため、格差の解消は不十分との批判も出ている。この法案は07年の通常国会では審議されずに継続審議となった。また、民主党は厚生、共済だけでなく、自営業者国民年金も併せて統合、一元化するべきだと主張している。

(梶本章 朝日新聞記者 / 2008年)

被用者年金一元化

2006年4月、政府・与党は会社員の厚生年金と公務員らの共済年金を一元化するための基本方針をまとめた。主な柱は、(1)保険料は段階的に引き上げ、公務員共済は18年に、私学共済は27年にそれぞれ厚生年金と同じ18.30%にそろえる。(2)共済年金にだけある上乗せ給付の職域加算は10年の加入者から廃止するが、新たに民間の企業年金に準じた制度を創設する。公務員OBの給付は継続する。(3)退職公務員の恩給期間部分に全額税で支払われる追加費用は最大27%削減し、給付額を最大1割減額する。(4)共済年金の積立金の運用部分は厚生年金に合わせて5年分とし、残りは新たな上乗せ年金の財源などに充てる。(5)配偶者や子供の死後も、父母や孫へと遺族年金の受給権が移る共済独自の転給制度を廃止する。改革法案は07年の通常国会に出す。政府・与党はこれにより年金の官民格差は是正されるとしている。しかし、追加費用の削減は恩給期間のあるOBに限られているため、格差の解消にはならないとの批判も出ている。

(梶本章 朝日新聞記者 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android