裙帯(読み)くんたい

精選版 日本国語大辞典 「裙帯」の意味・読み・例文・類語

くん‐たい【裙帯】

〘名〙
着物のすそとおび。〔十巻本和名抄(934頃)〕
庭訓往来(1394‐1428頃)「巫八乙女者。曳裾帯、舞遊透廊」 〔朱褒‐悼楊氏妓琴絃〕
※能因本枕(10C終)一〇八「青裾濃(すそご)の裳、唐衣、くんたい、領巾(ひれ)などして」

く‐たい【裙帯】

〘名〙 (「くんたい」の撥音「ん」を表記しない形) 令制女官朝服に着用した、裙の腰の結び余りを、装飾として別にとりそえたものという(歴世服飾考(1893))。後世の裳(も)引腰(ひきこし)はその遺制といわれる。
※枕(10C終)八九「菖蒲のかづら、赤紐の色にはあらぬを、領布(ひれ)、くたいなどして」

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デジタル大辞泉 「裙帯」の意味・読み・例文・類語

く‐たい【×裙帯】

《「くんたい」の撥音の無表記》女子朝服の腰の上に締めて前側左右に長く垂らした幅の狭い飾り帯。引き腰はその遺制という。

くん‐たい【×裙帯】

着物の裳裾もすそと帯。または、単に帯。
青羅の―は新蒲をべたり」〈和漢朗詠・下〉
くたい(裙帯)

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普及版 字通 「裙帯」の読み・字形・画数・意味

【裙帯】くんたい

もすそと帯。〔晋書列女、段豊の妻慕容氏伝〕豐、人の譖(しん)すると爲り、さる。容氏~密かに其の裙帶に書して云ふ、死後當(まさ)に我を段氏側に埋むべし~と。~自縊(じい)して死せり。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「裙帯」の意味・わかりやすい解説

裙帯
くんたい

くたいともいう。 11~12世紀頃の公家の女房たちが晴装束の際に (も) の腰につけて左右に垂らした紐。中国風のもので, (ら) などの薄布でつくられた。異なった色が相なかばするのが特色で,8世紀頃の (きょ) についていた飾りの縁が独立して装飾化したものと思われ,だんや目染などの染色を施したものがある。儀式以外は五節の舞妓などがつけた。

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世界大百科事典(旧版)内の裙帯の言及

【懸帯】より

…江戸時代に至って,この裳をつけるのに,唐衣(からぎぬ)と同じきれでこれにししゅうをしたり,あるいは糸の飾りをおいた帯を裳の後ろの腰につけて,これを肩越しに胸にかけてつるようになり,これを裳の懸帯といった。これは古代の裙帯(くんたい)のなごりであるという説もあるが明らかでない。江戸後期の天保年間(1830‐44)からこの懸帯の形式は廃止されて,小腰(こごし)として腰にまわして前で結ぶこととなった。…

【十二単】より

… 十二単の構成は紅の袴をはき,単に袿を数領重ね,晴の行事には砧(きぬた)の上に置いて打って艶を出した絹で作られた打衣(うちぎぬ)を加え,さらに美しい袿の表着(うわぎ)を重ね,腰に裳をつけ,唐衣を着て檜扇(ひおうぎ)を持つ。晴装束として領巾(ひれ)と裙帯(くんたい)をつけ,髪上げして釵子(さいし)を挿した姿を唐装束とか物の具と呼んだ。領巾は紗や薄絹の長い肩かけ,裙帯は紕帯(そえおび)のことで腰の左右に長く垂らす飾りの細帯,釵子は簪(かんざし)。…

※「裙帯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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