複写機(読み)フクシャキ(英語表記)copying machine

デジタル大辞泉 「複写機」の意味・読み・例文・類語

ふくしゃ‐き【複写機】

文書・図表などを複写する機械。コピー機

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「複写機」の意味・わかりやすい解説

複写機
ふくしゃき
copying machine

文書、図面、印刷物および写真などをそのまま複写する装置。コピー機ともよばれる。複写する方法には、光化学的方法(ジアゾ複写など)、静電的方法(電子写真)、熱的方法などがある。

 ジアゾ複写機ジアゾ化合物の光分解を利用して複写する装置で、一般的な複写用としては1950年代後半から1960年代まで用いられた。1960年代後半から1970年代前半にかけては専用の感光紙を用いる電子写真(直接)方式による複写機が用いられ、1970年代後半からは普通紙にコピーする電子写真(間接)方式が用いられるようになった。電子写真方式は、光が当たると電気が発生する光導電現象静電気による帯電現象を利用したもので、感光紙上に直接画像をつくる直接法と、普通紙に画像をつくる間接法がある。なお、ここではおもに1960年代後半以降普及している電子写真方式の複写機について述べることとする。

[北村孝司]

電子写真(直接)方式

電子写真(直接)方式では酸化亜鉛微粒子と樹脂から構成される光導電層を基紙上に塗布した電子写真感光紙を用いる。感光紙を暗所で帯電させた後、原稿からの反射光を照射すると暗部の帯電電荷はそのままであるが、明部は光導電現象により帯電電荷がなくなり、原稿と同様のパターンをもった帯電電荷(静電潜像)が形成される。次に感光紙上の帯電電荷と反対の極性に帯電した着色粉末トナー)を接触させると、静電潜像上に粉末が吸着されて可視像ができる。これをそのまま感光紙面上に加熱定着して固定することによりコピーを作成する。

[北村孝司]

電子写真(間接)方式

1970年代後半からは、普通紙にコピーする間接方式(PPC=plain paper copier)となり、感光体としては無機光導電材料のセレン感光体ドラムが用いられた。感光体ドラム上の静電潜像をトナーで現像したのち普通紙へ転写してから定着するので、コピー用紙は普通の紙と同じように軽く、持ち運びが容易になり、コピーの需要が急速に伸びた。さらに、1980年代から、有機光導電材料を用いたOPC感光体が使用されるようになり、多くの複写機に用いられるようになった。

[北村孝司]

アナログ複写機・デジタル複写機

複写機にはアナログ複写機とデジタル複写機がある。アナログ複写機の構造は、感光体ドラムをコロナ帯電する帯電部、原稿からの反射光をレンズを用いて照射する露光部、静電潜像にトナーを接触させる現像部、トナーを紙へ移動させる転写部、トナーを固着させる定着部から構成される。一方のデジタル複写機では、スキャナーで原稿からの反射光を電気信号に変換し、その電気信号の大きさに対応した半導体レーザーの光を走査しながら感光体へ露光する露光部の構造が、アナログ複写機と異なっている。

[北村孝司]

現状

電子写真方式は一般に良質のコピーが得られ、事務用複写機として用いられている。さらに、感光体とトナーが一体化されたカートリッジを交換することにより保守が容易になり、家庭でも使用されるようになった。通常、黒トナーを用いた白黒コピーであるが、シアンイエローマゼンタおよびブラックのトナーを用い、4回のトナー画像を1枚の普通紙上に重ねることによりカラーコピーを行うカラー複写機もある。また2000年代に入って以降、複写機、プリンターイメージスキャナー、ファクシミリなどの機能が一つにまとめられたデジタル複合機(MFP=multi-function Printer)が登場し、広く使われるようになった。

[北村孝司]

『電子写真学会編『電子写真技術の基礎と応用』(1986・コロナ社)』『電子写真学会編『続電子写真技術の基礎と応用』(1996・コロナ社)』『日本写真学会・日本画像学会合同出版委員会編『ファインイメージングとハードコピー』(1999・コロナ社)』『高橋恭介・北村孝司監修『ディジタルハードコピー技術と材料――最新の電子写真技術とその材料』(1999・シーエムシー)』『面谷信監修『トナーおよびトナー材料の最新技術』(2000・シーエムシー)』『日本画像学会編、平倉浩治・川本広行監修『電子写真――プロセスとシミュレーション』(2008・東京電機大学出版局)』

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改訂新版 世界大百科事典 「複写機」の意味・わかりやすい解説

複写機 (ふくしゃき)
copying machine

資料を2枚以上複製するときに用いる事務機械。複写機に要求される条件はより速く,簡単で,安価で複写できることにある。この条件を具備した複写機の開発は,1920年ジアゾ乾式の発明,同27年ジアゾ湿式,38年ゼログラフィー法の発明,41年拡散転写複写法,50年ゼログラフィー方式複写機の発売,サーモグラフィックプロセス複写機の発表,53年ダイトランスファーの発表,54年エレクトロファックス(EF)法の発表という歴史をたどり,電子技術の革新により高性能,高速,低価格を実現させている。日本では1951年にジアゾ複写機が開発された。設計図面などの焼付に使用した青写真(陰画)を陽画に改良したもので,現在でもランニングコストが安いこと,機械そのものも安いことで利用されている。1959年にはEF方式が開発され,事務用にも広く利用されたが,感光剤を塗付した特殊な複写用紙を使うこと,および立体物(ブックもの)の複写ができないなどのことから現在はほとんど利用されていない。62年富士ゼロックスが,どんな紙,普通紙にも複写ができる複写機を発表した。普通紙を使用する方式はPPC(plain paper copyの略)と呼ばれ,今日では複写機の主流となり多くのメーカーから発売されている。複写機の方式別による分類を図に示す。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「複写機」の意味・わかりやすい解説

複写機
ふくしゃき
duplicator; duplicating machine

文書,図面,書籍などの原稿から,そのままの大きさで,あるいは拡大・縮小して,原稿の複製をつくるための機械。複写方式によって,電子写真式,感熱式,ジアゾ式その他に分れる。電子写真式は光導電性物質を使い,光による電荷の変化を利用して画像を作る。これにはセレン板を光電導材料とする転写式 (ゼログラフィー) と酸化亜鉛を使う直接式 (エレクトロファックス) とがある。感熱式は熱線による複写で,乾式処理が可能。ジアゾ式はジアゾニスム塩の感光紙を使う半湿式現像が特徴。複写機はオフィス・オートメーションの中心装置として開発が進められており,カラー複写機,普通紙にコピーできる複写機,複写速度が印刷機に匹敵するスピードで両面コピーできる機種などが実用に供されている。また,出先での事務や家庭用にハンディタイプのものもある。

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世界大百科事典(旧版)内の複写機の言及

【電子写真】より

…主たる応用範囲として,文書複写および製版,X線電子写真,電子計算機などの出力記録装置の三つの方向が有望であり,さまざまなものが実用化されてきている。文書などの複写を行う複写機は現在もっとも広く利用されており,とくに高速複写機は1分間に120枚の複写が可能なものが出現し,社内印刷分野の一部として利用されている。中間調の再現は従来の銀塩写真に比べて十分ではないが,現像方法などの改良によりかなり改善されてきている。…

※「複写機」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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