(読み)ヒラミ

デジタル大辞泉 「褶」の意味・読み・例文・類語

ひらみ【×褶】

古代衣服で、一種男子はかまの上に、女子くんの上に着た。ひらおび。

しびら【×褶】

衣服の上からのように、腰に巻きつけて着るひざ上までの衣。略儀のもので、主に下級女房の間に用いられた。

ひら‐おび【×褶/枚帯】

ひらみ

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精選版 日本国語大辞典 「褶」の意味・読み・例文・類語

ひらび【褶】

〘名〙 「ひらおび(褶)」の変化した語。
書紀(720)天武五年正月(北野本訓)「衣(きぬ)(はかま)(ヒラヒ)(〈別訓〉ひらみ、ひらおひ)腰帯(おひ)脚帯(あゆひ)及び、机杖(おしまつき)賜ふ」

ひらみ【褶】

〘名〙 (「ひらおび(褶)」の変化した「ひらび(褶)」のさらに変化した語) =ひらおび(褶)
播磨風土記(715頃)宍禾「大神の褶、此の村に落ちにき。故、褶(ひらび)の村と曰ひき」

しびら【褶】

〘名〙 下半身にまとうひだの少ない裳(も)の一種。略儀の所用で、主として下級の女房の間に用いられた。
源氏(1001‐14頃)末摘花「きたなげなるしびら引き結ひつけたる腰つき」

うわ‐み うは‥【褶】

〘名〙 =うわも(上裳)〔十巻本和名抄(934頃)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「褶」の意味・わかりやすい解説

褶 (ひらみ)

中国の衣服制では〈褶〉は袴とともに着用する短い上衣を指すが,日本では,男女ともに下半身にまとった,(も)の一種をいう。《日本書紀》推古13年(605)条に初出し,冠位十二階の服制の一環として制せられたものと思われる。おそらく日本固有の衣服形態に淵源する衣服と考えられ,682年(天武11)に脛裳(ちはや)等とともに廃止された。これは685年に制定された朝服が,唐の朝参の服であった〈袴褶〉,すなわち上衣・下袴の制をとり入れたものであったことと対応する。褶は大宝衣服令で〈礼服(らいふく)〉として再び規定されるが,これは礼服の制度に日本的な独自性を盛り込むことにより,日本的な礼の秩序の存在を東アジア世界に喧伝しようとしたためとみられる。なお,令制では,男子の場合,皇太子,諸王,諸臣の褶はおのおの色の別があったが,素材は一律に紗で,袴の上にまとうものであった。女子では,内親王・女王と内命婦に色の区別があり,また裙の内部に着けて,裙の下から褶の端をのぞかせたものらしい。また後世の〈しびら〉は,褶の簡易化したものと考えられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「褶」の意味・わかりやすい解説


ひらみ

貴族階級の衣服で、裳(も)の一種。男子の褶は袴(はかま)の上から腰にまとい、女子の褶は裙(くん)の上に着装した。『日本書紀』推古(すいこ)天皇13年(605)の条に「皇太子、諸王、諸臣に命じて褶を着(き)しむ」とあり、中宮寺の天寿国繍帳(てんじゅこくしゅうちょう)男子像の短いスカート状のものが褶にあたると考えられる。天武(てんむ)天皇11年(682)に「褶なせそ」とあり、一時廃せられたが、養老(ようろう)の衣服令(りょう)で、礼服に皇太子が深紫紗褶(ふかむらさきしゃのひらみ)、親王と諸王が深緑紗褶、諸臣が深縹(はなだ)紗褶、内親王と女王が浅緑褶、内命婦(ないみょうぶ)が浅縹褶を用いるとしている。平安時代以降、女子は礼服を着用する機会がなくなり、褶を「しびら」と称して女房装束の裳の上に重ねて着る場合もあったことが『源氏物語』によって知られる。

[高田倭男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「褶」の意味・わかりやすい解説


ひらみ

7世紀,冠位十二階の制度が施行された際に諸王,諸臣がつけるように命じられた服装。奈良時代以降,男女が礼服 (らいふく) を着用する際に用いた紗の (も) で,男性の場合は白袴の上にまとい,女性の場合は表衣の上から,うしろ腰より前のほうへまとい,その上から裙帯 (くんたい) を前から当ててうしろへまわした。重ね裳の場合では,下裳が褶である。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【褶】より

…中国の衣服制では〈褶〉は袴とともに着用する短い上衣を指すが,日本では,男女ともに下半身にまとった,(も)の一種をいう。《日本書紀》推古13年(605)条に初出し,冠位十二階の服制の一環として制せられたものと思われる。…

【領巾】より

…古代に女子が首にかけ,左右に垂らして用いた一条の布。褶,比礼,肩巾とも記す。5尺から2尺5寸の羅や紗などを,一幅または二幅に合わせてつくった。…

※「褶」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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