西園寺公宗(読み)さいおんじ・きんむね

朝日日本歴史人物事典 「西園寺公宗」の解説

西園寺公宗

没年建武2.8.2(1335.8.20)
生年:延慶2(1309)
鎌倉時代後期から建武新政期の公家。父は西園寺実衡,母は権大納言藤原為世の娘。正中1(1324)年10月参議,翌年12月権中納言に昇進。嘉暦1(1326)年11月,父実衡が没すると,西園寺家家督関東申次の役職を継いだ。公宗ときに18歳。朝廷では後醍醐天皇が討幕を企図したので,朝廷と鎌倉幕府の間にさまざまの波風が立ち,両者の間を調停する関東申次の職務遂行は困難を極めたものと考えられる。公宗はふたつに分かれた天皇家のうち後伏見上皇を中心とする持明院統に接近していたため,大覚寺統の後醍醐天皇とは折り合いが悪かったらしい。元徳3/元弘1(1331)年8月,後醍醐天皇が南山城笠置山に出奔すると翌月京都では光厳天皇が践祚し公宗は光厳天皇のもとで重臣として仕えた。同10月には捕らえられた後醍醐天皇の検分に立ち会い,拘禁中の同天皇と接触している。正慶2/元弘3年5月鎌倉幕府が滅亡し光厳天皇が廃位され,後醍醐天皇による建武の新政が始まると,公宗は一旦権大納言を辞したが,復任。しかし,建武の新政下で公宗は逼塞を余儀なくされた。建武2(1335)年6月,後伏見院擁立をたくらんだとして日野資名父子らと共に召し捕られ,同8月誅殺された。この事件には家督をねらう弟公重がからんでいた。なお『竹むきが記』の記主日野名子(資名の娘)は公宗の妻で,南北朝時代の武家執奏西園寺実俊は両人の間に生まれた子。<参考文献>森茂暁『太平記群像

(森茂暁)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「西園寺公宗」の意味・わかりやすい解説

西園寺公宗
さいおんじきんむね
(1310―1335)

鎌倉後期の政治家。父は実衡(さねひら)、母は藤原為世(ためよ)の女(むすめ)(昭訓門院春日局(しょうくんもんいんかすがのつぼね))。花園(はなぞの)・後醍醐(ごだいご)朝に権大納言(ごんのだいなごん)、兵部卿(ひょうぶのきょう)に至る。持明院(じみょういん)・大覚寺(だいかくじ)両統に仕えた。1332年(元弘2)後醍醐天皇の隠岐(おき)遷幸のとき、皇子たちは公宗の邸に預けられ、翌年、六波羅探題(ろくはらたんだい)が上皇を擁して近江(おうみ)に没落したときには公宗は京にとどまった。建武(けんむ)中興政治では後醍醐天皇の中宮大夫(ちゅうぐうのだいぶ)を勤めた。一方、北条高時(たかとき)の弟泰家(やすいえ)を邸にかくまって北条氏再興に備え、1335年(建武2)後醍醐天皇暗殺を企て、顕(あらわ)れて同年8月2日誅(ちゅう)せられた。公宗は文章をよくし、また、その和歌勅撰(ちょくせん)集にとられている。

[多賀宗隼]

『佐藤進一著『南北朝の動乱』(『日本の歴史9』1965・中央公論社)』

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改訂新版 世界大百科事典 「西園寺公宗」の意味・わかりやすい解説

西園寺公宗 (さいおんじきんむね)
生没年:1310-35(延慶3-建武2)

鎌倉末期の公卿。正二位,権大納言。西園寺実兼の曾孫。西園寺家は公経以来,鎌倉幕府の強力な後援を得て隆盛を誇ってきたが,幕府の倒壊によって家運もようやく傾いた。公宗は家運の挽回を図って,北条時行らと建武政権への反乱を企てたが,事前にもれて誅された。公宗はまた歌人としても知られ,その作品は《続後拾遺和歌集》などにとられている。
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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「西園寺公宗」の解説

西園寺公宗 さいおんじ-きんむね

1309-1335 鎌倉時代の公卿(くぎょう)。
延慶(えんきょう)2年生まれ。西園寺実衡(さねひら)の長男。母は二条為世(ためよ)の娘,昭訓門院春日。嘉暦(かりゃく)元年家督をついで関東申次(もうしつぎ)となり,元徳2年権(ごんの)大納言。正二位。北条家とむすんで後醍醐(ごだいご)天皇の暗殺をはかるが失敗し,義父の日野資名(すけな)らとともに捕らえられ,建武(けんむ)2年8月2日処刑された。27歳。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「西園寺公宗」の意味・わかりやすい解説

西園寺公宗
さいおんじきんむね

[生]延慶3(1310).京都
[没]建武2(1335).8.2. 京都
鎌倉時代末期の廷臣。実衡の子。建武2 (1235) 年,建武政権の動揺に乗じ,北条時行らと政府転覆をはかったが捕えられ,殺された。 (→中先代の乱 )

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