西戎(読み)せいじゅう

精選版 日本国語大辞典 「西戎」の意味・読み・例文・類語

せい‐じゅう【西戎】

[1] 〘名〙 古代中国人が西方の異民族をいやしんで呼んだ語。青海・甘粛地域に住んだトルコ族チベット族、または広く西域の住民をも含めた。転じて、西方の異民族の称。西方のえびす。また、日本では、広く、野蛮人、朝敵をもいう。西夷
平家(13C前)一一「国母官女は東夷西戎の手にしたがひ」
歌舞伎伊勢平氏栄花暦(1782)三立(暫)「東夷南蛮北狄西戎(セイジフ)」 〔礼記‐曲礼〕
[2] 江戸時代、遊所としての新宿の異称。江戸の西方にあったところから、深川の東夷、品川の南蛮、吉原の北狄(ほくてき)に対していう。
※雑俳・川傍柳(1780‐83)二「東夷南蛮西戎は岡場所

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デジタル大辞泉 「西戎」の意味・読み・例文・類語

せい‐じゅう【西×戎】

古代中国人がトルコ族・チベット族など西方の異民族を称した語。西夷せいい。→東夷とうい南蛮北狄ほくてき

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「西戎」の意味・わかりやすい解説

西戎
せいじゅう

中国古代の西方異民族に対する蔑称(べっしょう)。戎は本来、戎狄(じゅうてき)、戎夷(じゅうい)などとして異民族をさした語であるが、のち西戎として西方民族をいうようになった。彼らは甘粛(かんしゅく)、陝西(せんせい)、山西方面にかけて活躍したらしく、陝西から興った周王朝もしばしばこれに悩まされ、紀元前8世紀前半、西戎の一種犬戎のためにいったん滅ぼされた。西戎は多くの部族に分かれており、春秋前期、秦(しん)の穆(ぼく)公が征したなかには緜諸(めんしょ)の戎、戎(こんじゅう)(昆夷(こんい))、翟(てきげん)の戎などがあり、そのほかにも義渠(ぎきょ)戎、驪(れい)戎、陸渾(りくこん)の戎とか大茘(たいれい)、烏氐(うてい)、胊衍(くえん)など多くの名が伝えられている。その後は氐(てい)、羌(きょう)などチベット系の諸民族をさして西戎とよぶようになった。

[宇都木章]

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旺文社世界史事典 三訂版 「西戎」の解説

西戎
せいじゅう

古代の中国人が,西方の青海・甘粛 (かんしゆく) 方面のチベット系またはトルコ系の異民族(夷狄 (いてき) )を呼んだ蔑称
前8世紀に周を東遷させた犬戎もその一派

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