要石(読み)かなめいし

精選版 日本国語大辞典 「要石」の意味・読み・例文・類語

かなめ‐いし【要石】

[1] 〘名〙
茨城県鹿島神宮境内などにある石。根は深く、地震をしずめるといわれている。
※仮名草子・かなめ石(1663)下「ゆるぐともよもやぬけじのかなめいしかしまの神のあらんかぎりは」
※歌舞伎・暫(1714)「動かぬ鹿島の要石(カナメイシ)、なまづがうっつひ姉ヱゆゑ」
浄瑠璃神霊矢口渡(1770)二「是ぞお留守の要石(カナメイシ)、動かぬ胸のしめくくり、南瀬の六郎宗澄出仕の上下さはやかに、金作りの大小も流石お家の家老職」
囲碁で、彼我攻防要点を形成する重要な石。
④ 石造りまたはれんが造りのアーチの中央(頂上)に入れる石。剣石楔石(くさびいし)キーストーン。〔日本建築辞彙(1906)〕
[2] 謡曲。脇能物。廃曲。天保一五年(一八四四)水戸の徳川斉昭の作。鹿島神宮参詣の奉幣使の前に建御雷神(たけみかずちのかみ)が現われる。

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デジタル大辞泉 「要石」の意味・読み・例文・類語

かなめ‐いし【要石】

茨城県鹿島かしま神宮の境内にある石。根が深いところから、地震をしずめるとされる。
ある物事中心となる重要な場所や人など。「医学界要石として重きをなす」
石・煉瓦造りのアーチの最頂部に差し入れて、全体を固定する楔形くさびがたの石。キーストーン。剣石。楔石。
囲碁で、彼我の攻防の要点を形成する重要な石。
[類語](2中心重要重点キーストーンかなめ中軸枢軸主軸主体基幹根幹中枢中核基軸大本おおもと根本基盤大根おおね

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「要石」の意味・わかりやすい解説

要石
かなめいし

地震を抑えると称される石。これを称する石は各地の神社にみられる。なかでも、茨城県鹿嶋(かしま)市の鹿島神宮の境内にあるものが著名である。直径25センチメートル、高さ15センチメートルほどの丸い石で、頭の部分がわずかにくぼんだ形をしている。地中に深く根を張っているといわれる。古来、地震をおこすナマズの頭を抑えているとの伝説をはじめ、数々の俗信に結び付いている。『鹿島宮社例伝記』には、鹿島の大明神が降臨したときにこの石に座ったとある。古くは御座(みまし)の石とよばれていたことからもわかるように、要石は元来、神の依(よ)りきたる磐座(いわくら)であった。各地に知られている腰掛石影向(ようごう)石の信仰と同じ性格である。

[野村純一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「要石」の意味・わかりやすい解説

要石
かなめいし
keystone

建築用語。アーチ,ボールトの頂部を飾る迫石 (せりいし) 。アーチの両側の力の持合う部分で,壁面から突き出していることが多く,また装飾的な彫刻が施されているのが普通である。アーチやボールトの安定性はこの石にかかっており,これを抜取るとくずれるのでこの名がある。

要石
かなめいし

茨城県の鹿島神宮境内にある石。祭神たるタケミカズチノカミが降臨したとき坐した石で,地震を防ぐと伝えられる。

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世界大百科事典(旧版)内の要石の言及

【地震】より

…東南アジアや東アジアには,世界魚または世界蛇が多い。茨城県鹿島地方の鹿島神宮には要石(かなめいし)があって,鹿島明神が世界魚である鯰(なまず)の頭と尾を押さえつけているという俗信がある。要石が鯰を押さえている釘(くぎ)で,これがゆるくなると鯰が動き地震が起こるというのである。…

【ナマズ(鯰)】より

…地震や天候変化に敏感なため,地震を起こす力があるとか,地震の予知能力があるなどという伝承がある。安政の地震の際にはナマズがさわいだという記録があり,これをおさえているのが常陸鹿島神宮の要石(かなめいし)であるともいわれているが,ナマズを瓢簞でおさえること,つまり粘りがあるものを丸いものでおさえることの困難さを諷した〈瓢簞鯰〉から転じて,安定させることの困難なものとして地震が考えられ,それを生物化したものとして地震の発生をナマズに付会したとも考えられる。近世末の社会的動揺と江戸人のしゃれとが合体して生まれたものとみるべきであろう。…

【封】より

…あるものを空間的に閉じこめ,内外の空間の間の相互干渉を遮断するためのしるし。この空間は,文書の封のように物理的に設定されたものもあれば,たとえば地震鯰を封じこめるために鹿島神宮の要石によって作られたそれのように,呪術的に設定されたものもあった。文書の場合,現在の封筒のようにして作られた空間の封じ目に,〆や封などのしるしを印判や手書きで加えることによって封が完成するが,このしるし自体に空間を守る呪力がそなわっており,したがって封印で守られる空間も単なる物理的なそれではないと意識されていたところに,前近代の封の特質がある。…

※「要石」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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