覇流村(読み)へるむら

改訂新版 世界大百科事典 「覇流村」の意味・わかりやすい解説

覇流村 (へるむら)

東大寺の近江国の荘園犬上郡と愛知(えち)郡の郡境で琵琶湖荒神山に挟まれた曾根沼一帯の地。正倉院所蔵の東大寺開田図のうち,天平勝宝3年(751)日付の〈近江国覇流村墾田地図〉が〈近江国水沼村墾田地図〉と麻布に一幀とされ遺存している。その奥書部分に記載の太政官符によると,水沼(みぬま)村とともにこの村は,751年以前に太政官の命により,近江国が正税を用い,公力により開発した70町の地である。田図は751年にその結果を記載,作成されて,太政官に報告提出したもの。恵美押勝の乱後か,その地は水沼村とともに田図を添えて東大寺に勅施入され,以後東大寺の荘園となり,950年(天暦4)の〈東大寺封戸荘園幷寺用帳〉には〈覇流庄田112町7反36歩〉,また《東大寺要録》の〈長徳四年(998)注文定〉には〈覇流庄田113町7反46歩〉とみえる。なお1070年(延久2)の〈近江国弘福寺領荘田注進〉に弘福寺領平流(へる)荘がみえるが,覇流村のやや東南の現彦根市稲里町一帯に比定され,直接的関係はない。
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百科事典マイペディア 「覇流村」の意味・わかりやすい解説

覇流村【へるむら】

近江国にあった古代の村,のち奈良東大寺領の荘園となる。現在の滋賀県彦根市の曾根沼の一帯にあたる。751年の東大寺近江国開田図(正倉院蔵)に〈覇流村〉70町とあり,これ以前に太政官(だいじょうかん)の命により近江国の正税(しょうぜい)を用いて公力によって開発され,東大寺に施入された。950年には犬上郡覇流庄田112町7反余とみえ,開発の進展がうかがえる。当荘は犬上郡と愛知(えち)郡にわたっているが,1070年にみえる大和弘福(ぐふく)寺領の平流荘11町余は東大寺領南東に位置する。

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