角兵衛(読み)カクベエ

デジタル大辞泉 「角兵衛」の意味・読み・例文・類語

かく‐べえ〔‐ベヱ〕【角衛】

角兵衛獅子」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「角兵衛」の意味・読み・例文・類語

かく‐べえ ‥ベヱ【角兵衛】

〘名〙
※狂詩・狂詩選諺解(1787)坊様「北越山中列角兵、饅頭煎餠対羊羹
② (原価倍額で売ることを「折り」ともいうところから、体を二つに折る角兵衛獅子としゃれて) 原価の倍額で売ること。大もうけをすること。
権妻の果(1889頃)〈饗庭篁村〉一「二十両で手を打ちますと云ふに、主人も悦こんで二分金で二十両すぐ渡したので、長次郎は鬼の首を取ったほどの悦こび〈略〉お北吃驚(びっくり)するな、角兵衛がデングリ返しを打たぞ」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「角兵衛」の意味・わかりやすい解説

角兵衛
かくべえ

歌舞伎(かぶき)舞踊。常磐津(ときわず)・長唄(ながうた)掛合い。本名題(ほんなだい)『后の月酒宴島台(のちのつきしゅえんのしまだい)』。2世瀬川如皐(じょこう)作詞、3世岸沢式佐(しきさ)・4世杵屋(きねや)三郎助作曲。市山七十郎(なそろう)・藤間大助・松本五郎市振付け。1828年(文政11)9月、江戸中村座で2世中村芝翫(しかん)(4世歌右衛門(うたえもん))の角兵衛、5世瀬川菊之丞(きくのじょう)の女太夫(おんなだゆう)により初演。大道芸人の角兵衛獅子(じし)に鳥追いの女太夫が絡むもので、「新発田(しばた)五万石……」の松坂節、団扇(うちわ)太鼓の題目(だいもく)踊り越後(えちご)七不思議の踊りなどが眼目。角兵衛の野趣に鳥追いの吉原情緒を対照させた内容で、曲も振りも軽妙洒脱(しゃだつ)な作である。現在は常磐津だけで踊られるが、曲は長唄にも残る。また、初演のときは『舌出し三番(さんば)』から引き抜く趣向で、三番叟(さんばそう)から変わる角兵衛、千歳(せんざい)から変わる鳥追いのほか、翁(おきな)が勇み男に引き抜いて登場したが、のち省略されるのが例になった。別曲に、『仮名手本忠臣蔵』十一段返しの所作事のうち、五段目にあたる長唄『角兵衛』(1847)がある。

[松井俊諭]

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改訂新版 世界大百科事典 「角兵衛」の意味・わかりやすい解説

角兵衛 (かくべえ)

歌舞伎舞踊。常磐津・長唄掛合。本名題《后の月酒宴島台(のちのつきしゆえんのしまだい)》。作詞2世瀬川如皐(じよこう)で,常磐津は3世岸沢式佐,長唄は10世杵屋(きねや)六左衛門の作曲。振付藤間大助(2世勘十郎)。初春に越後から来た角兵衛獅子と,江戸の女太夫を対照させた踊り。1828年(文政11)9月江戸中村座初演。角兵衛は2世中村芝翫(しかん)(のちの4世歌右衛門),女太夫は5世瀬川菊之丞が演じた。現在は常磐津と長唄で,別々に残っている。
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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「角兵衛」の解説

角兵衛
(通称)
かくべえ

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
后の月酒宴島台 など
初演
文政11.9(江戸・中村座)

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世界大百科事典(旧版)内の角兵衛の言及

【長唄】より

…この期には俳優にも3世坂東三津五郎,3世中村歌右衛門など兼ねる役者に名人が現れ,変化物(へんげもの)舞踊が流行した結果,長唄も短編ではあるが変化物に《越後獅子》《汐汲(しおくみ)》《小原女(おはらめ)》などの傑作が生まれた。また,伴奏音楽の面でも変化の妙を示そうとして豊後節系浄瑠璃(常磐津,富本,清元)と長唄との掛合が流行したのもこのころで,《舌出三番叟(しただしさんばそう)》《晒女(さらしめ)》《角兵衛》などが掛合で上演された。さらにこの時代には,舞踊の伴奏音楽という制約から離れた鑑賞用長唄(お座敷長唄)が誕生した。…

※「角兵衛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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