角立(読み)かどだつ

精選版 日本国語大辞典 「角立」の意味・読み・例文・類語

かど‐だ・つ【角立】

[1] 〘自タ五(四)〙
① かどばっていて、なめらかでない。かどがたつ。
※俳諧・犬子集(1633)一四「閼伽の水汲手こそいたけれ あつ風呂のかいげの柄共かとたちて〈貞徳〉」
② わざとらしくなる。改まっている。
浄瑠璃・鑓の権三重帷子(1717)下「今迄とは事かはり案内なしも無礼なり。物もうも角だつ」
③ 人の目をひく。人の注意をひく。
※颶風新話(航海夜話)(1857)初「其中で廉立(カドダ)った箇条には、どうしても打消されぬ証拠があり」
※蛇(1911)〈森鴎外〉「妻にこれと云って廉立(カドダ)った悪いことはありません」
④ 人の神経を刺激するようなふるまいをする。あらっぽくなる。また、理屈っぽい言い方や杓子定規態度をして、物事が荒立つようにする。かどがたつ。
※寛永刊本蒙求抄(1529頃)二「方直は、正直にかと立て、かとをたをさぬ物ぞ」
多情多恨(1896)〈尾崎紅葉〉前「此を何とか一つ稜立(カドダ)たぬやうに、巧く片附けたいもの」
[2] 〘他タ下二〙 ⇒かどだてる(角立)

かど‐だ・てる【角立】

〘他タ下一〙 かどだ・つ 〘他タ下二〙
① 物にかどをつくる。また、人の神経にさわるような態度、表現をする。→目に角を立てる
渦巻ける烏の群(1928)〈黒島伝治〉八「中隊長は腹立たしげに眼に角立てた」
※白い壁(1934)〈本庄陸男〉二「冷然と疑ひ深い眼を角立ててゐた校長は」
② 改まって示す。ことさらに示す。
大道無門(1926)〈里見弴〉白緑紅「自分が名のらずに、ひとの名を訊(き)くことの無礼を思ってだらうけれど、別にそれ故と角立(カドダ)てもしずに」

かく‐りつ【角立】

〘名〙
① 他にぬきんでていること。他を圧倒していること。傑出卓越。また、卓越したもの。かくりゅう。
明六雑誌‐三一号(1875)教門論疑問・三〈柏原孝章〉「百露の王既に西班牙の為に滅さる、今に至て天孫の国万国と角立する者独り皇国あるのみ」 〔後漢書‐徐穉伝〕
② ならび立つこと。互いにしのぎをけずること。並立(へいりつ)
※授業編(1783)四「今日の如く諸説角立(カクリツ)してあらんには」 〔宋史‐呂午伝〕

かく‐りゅう ‥リフ【角立】

〘名〙 =かくりつ(角立)
※本朝文粋(1060頃)一〇・松声当夏寒詩序〈大江以言〉「五鹿驍逸之才、臨水檻而角立」
※色葉字類抄(1177‐81)「角立 独歩分 カクリウ」

つの‐だ・つ【角立】

[1] 〘自タ四〙
① かどがとがっている。かどだつ。
② 他との区別がはっきりとしていて、めだつ。きわだつ。
[2] 〘他タ下二〙 ⇒つのだてる(角立)

つの‐だ・てる【角立】

〘他タ下一〙 つのだ・つ 〘他タ下二〙
① 角を起こし立てる。
② かどを立てる。
③ 他との区別をはっきりとさせて、めだつようにする。きわだつようにする。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

普及版 字通 「角立」の読み・字形・画数・意味

【角立】かくりつ

ぬきんでる。傑出する。唐・李徳裕〔大孤山の賦〕惟(こ)れ大の角立する、二山を掩ひて豎(たくじゆ)す。

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