解熱薬(読み)ゲネツヤク

デジタル大辞泉 「解熱薬」の意味・読み・例文・類語

げねつ‐やく【解熱薬】

解熱剤」に同じ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「解熱薬」の意味・わかりやすい解説

解熱薬
げねつやく

下熱薬とも記す。体温が異常に上がったとき、これを下降させ平熱にする薬剤で、俗に熱さましともいう。中枢神経系とくに視床下部にある体温中枢に作用して体温を降下させるもので、多くは軽度の鎮痛作用を有している。熱性疾患の対症療法として用いられ感冒の治療に繁用されるほか、その鎮痛作用や消炎作用を利用して頭痛、歯痛、神経痛、リウマチにも常用される。サリチル酸系、アニリン系、ピラゾロン系その他がある。世界でもっとも古くから使用された解熱薬はキナ皮であるが、その有効成分であるキニーネは現在その目的ではまったく使用されていない。

 サリチル酸系でもっとも有名なのはアスピリンで、そのほかサリチルアミド、エテンザミドは一般用薬としての感冒薬の組成としてよく使用されている。サリチル酸ナトリウム、サリチル酸コリン、サルサラート、アスピリンアルミニウムはアスピリンの胃障害を少なくしたものである。アニリン系ではアセトアミノフェンフェナセチンが有名であるが、腎(じん)障害や肝障害をおこすことがある。またアニリン系のフルフェナム酸メフェナム酸、ジクロフェナックナトリウムは抗炎症作用が強く、鎮痛、解熱、消炎剤として関節リウマチ、四十肩、五十肩などの治療に用いられている。ピラゾロン系ではアンチピリンアミノピリンスルピリンイソプロピルアンチピリンがあり、アミノピリンは内服により腸管でニトロソ化合物となり、これが発癌(はつがん)性を有することから坐薬(ざやく)のほかはほとんど使用されなくなった。スルピリンは水溶性で筋肉注射用にも使用されるが、組織障害性を有し大腿(だいたい)四頭筋短縮症の原因の一つとして問題となった。イソプロピルアンチピリンは頭痛、片頭痛、神経痛の鎮痛の目的で配合され、またフェニルブタゾン、オキシフェンブタゾンはフルフェナム酸、メフェナム酸などと同じく非ステロイド系消炎剤ともいわれ、関節リウマチなど各種炎症性疾患の治療に用いられている。そのほかフェニル酢酸系のイブフェナック、イブプロフェンインドメタシンも解熱・鎮痛・消炎剤として繁用される。

[幸保文治]

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百科事典マイペディア 「解熱薬」の意味・わかりやすい解説

解熱薬【げねつやく】

熱冷ましとも。直接・間接的に中枢神経系に作用して,異常に上昇した体温を下げる薬剤。通常鎮痛作用を兼ね備えるので,解熱鎮痛薬というのが妥当。直接中枢神経に作用するキニーネ類と,発熱の原因物質となるプロスタグランジンの生成を抑えるアスピリン様薬物(アスピリン,インドメタシン)・アニリン系(アセトアミノフェン)などの2群に大別されるが,キニーネ類は現在ではあまり用いられない。また近年,血液障害や腎毒性の指摘により,古くから汎用された薬剤で使用中止になったものもある(フェナセチンなど)。
→関連項目対症療法

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改訂新版 世界大百科事典 「解熱薬」の意味・わかりやすい解説

解熱薬 (げねつやく)
antipyretic

解熱の目的で用いられる薬剤。過去ならびに現在,解熱の目的をもって医療の場で使用されてきた薬物は,一般に解熱作用とともに鎮痛作用も兼ね備えている。この意味では解熱鎮痛薬として分類するのが妥当であるが,ときに解熱のみを目的として意識する立場から,この言葉が使われることがある。
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世界大百科事典(旧版)内の解熱薬の言及

【体温】より


【ヒトの体温】
 体温測定は腋窩(えきか),口腔,直腸で行われるが,日本では腋窩に体温計を挟んで測定することが慣習となっている。腋窩に一時的にできる空洞の温度がほぼ安定するには15分以上を要する。体温は1日周期で規則的に変動するが,成人の腋窩温を午後1~4時の間に測定すると36.89±0.34℃である。外国では舌の下に体温計を入れて口腔温を測るのが一般的で,口腔温は腋窩温より約0.4℃高く,直腸温は0.8℃高い。…

※「解熱薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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