(読み)ゆりる

精選版 日本国語大辞典 「許」の意味・読み・例文・類語

ゆ・りる【許】

〘自ラ上一〙 ゆ・る 〘自ラ上二〙 (拘束や固まった状態にゆるみができる意)
① 罪、または禁止・制限などが解除になる。許される。赦免される。
平家(13C前)五「抑(そもそも)頼朝勅勘をゆりずしては、いかでか謀反をばおこすべき」
浄瑠璃・女殺油地獄(1721)下「勘当のゆりるまで貸して下され」
許可される。免許となる。
長秋詠藻(1178)下「近衛院の御時、四位の後昇殿ゆりて初めて御物忌に籠れる夜」
春夏秋冬‐夏(1902)〈河東碧梧桐・高浜虚子編〉「帯刀をゆりたる家の幟かな〈麦圃〉」
③ 警戒心が解ける。心がなごむ。うちとける。
※あさぢが露(13C後)「上の御きそくゆるること侍りしを」
④ おだやかになる。平穏になる。
保元(1220頃か)下「富家殿に帰りすませ給ふべきよし内々申させ給へ共、天気ゆりず」

がり【許】

[1] 〘接尾〙 (「が‐あり」または「か(処)‐あり」の変化した語) 代名詞または人を表わす名詞に付き、その人の許(もと)に、その人の所に、の意を表わす。格助詞「に」や「へ」を伴わないで、移動の意を含む動詞に直接に続く。
万葉(8C後)一四・三五三八「広橋を馬越しがねて心のみ妹我理(ガリ)やりて我(わ)はここにして」
御伽草子・福富長者物語(室町末)「典薬頭清麿がり行きてしかじかと歎きいひければ」
[2] 〘名〙 ((一)の用法から変化したもの) 人を表わす名詞に、格助詞「の」を介して付き、その人の許(もと)に、その人のいる所に、の意を表わす。形式名詞のように使われるようになったもの。
※阿波国文庫旧蔵本伊勢物語(10C前)A「つとめてもなほいみじう降るに、ある人のがりやりし」
※宇治拾遺(1221頃)七「這ひ起きて約束の僧のがりゆきて、物をうち食ひてまかり出でけるほどに」

ゆ・る【許】

[1] 〘自ラ上二〙 ⇒ゆりる(許)
[2] 〘自ラ下二〙 ⇒ゆれる(許)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「許」の意味・読み・例文・類語

きょ【許】[漢字項目]

[音]キョ(漢) [訓]ゆるす もと がり ばかり
学習漢字]5年
〈キョ〉
願いを聞き入れる。ゆるす。「許可許諾許否許容允許いんきょ官許裁許聴許特許認許免許黙許
おおよその数量を表す語。ばかり。「許多きょた少許
〈もと〉「親許口許国許枕許まくらもと目許
[名のり]ゆく
難読許多あまた許婚いいなずけ許嫁いいなずけ幾許いくばく

がり【許】

《「かあ(処在)り」の音変化という》
[接尾]人を表す名詞または代名詞に付き、その人のいる所へ、…のもとに、の意を表す。
いも―と馬に鞍置きて生駒山いこまやまうち越え来ればもみち散りつつ」〈・二二〇一〉
[名]が形式名詞化したもの》人を表す名詞に助詞「」を介して付き、その人のもとに、の意を表す。
「約束の僧の―ゆきて」〈宇治拾遺・七〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「許」の意味・わかりやすい解説

許【ゆるし】

日本の伝統芸能用語。技芸や技能の伝承において,その相伝内容に初許(はつゆるし)・裏許・中許・奥許などの段階を設け,各段階ごとに,師匠から弟子に伝授の印可証明(免状)を与える制度。とくに江戸時代中期以降,家元制度の確立に伴って,素人の被教習者が多い芸能諸種目において,免許組織の体系化が進んだ。免状取得には金銭の授受が伴ったが,免状は,被教習者にとっては個々の技芸の到達度と,同門の仲間内での位置を明確にするものであり,一方の教授者にとっては,自らの知的所有権の確保と経済保護につながるものであった。また,免状を与えられた弟子は,さらに自分の弟子に同様な免状を与えることができるようになり,家元制度をより確固たるものにすることにつながった。こうした免許制度は,謡曲・地歌・箏曲をはじめ,茶道・花道・香道・囲碁・将棋など,数多くの実演芸能種目に及んだ。とくに地歌・箏曲などでは,免許に対する金銭的謝礼を〈許し金〉などといい〈曲許し〉と称して,場合によっては1曲だけの伝授も行われた。

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