証判(読み)しょうばん

精選版 日本国語大辞典 「証判」の意味・読み・例文・類語

しょう‐ばん【証判】

〘名〙
① 権威者によるあかし判定や確認。また、その確認文言および署判
※仁和寺文書‐安和二年(969)七月八日・法勝院領目録「請特被加随近并在地国郡刀禰等証判院領所々田地公験等焼亡状」
今昔(1120頃か)三「此に依て証人を以て判ぜしむるに、証判の者、盧至が妻子に向て二人の実否を問ふ」

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改訂新版 世界大百科事典 「証判」の意味・わかりやすい解説

証判 (しょうはん)

古文書学上の用語。解(げ),申状などの上申文書,およびその系譜をひく紛失状,着到状,軍忠状,または解に起源を有する売券,譲状,施入状(寄進状)などの土地財産に関する証文類の余白に記された,その文書に対する承認,確認などの意をあらわす文言と署判のこと。提出された文書の袖,奥,たまには裏に記し,外題(げだい)とも与判ともいう。律令制下では土地所有権の移動は政府の許可を必要としたから,その売買,譲渡,施入(寄進)にあたっては,京職,国司郡司の承認を求める解を提出する。これに対して例えば京職などは,その文書の奥に署判を加え(のちには文言を入れたものもみられる),承認の意をあらわす。これらを職判,国判,郡判という。平安中・末期ごろからは,これらの文書は直接買得譲与,施入を受けた人にあてられるようになり,特別な場合を除いて公権力による証判はみられなくなる。10世紀以降の荘園制の成立発展期には,荘園領主や在地の百姓などが,官物・雑役免除を求める申請を行うが,国司はそれを認める旨の証判を加えて返却する。これは免除国判といわれ,免判とも称された。鎌倉時代の御家人の所領の譲与は,幕府の承認を必要としたから,はじめは下文(くだしぶみ)あるいは下知(げち)状で行われていた。しかし1303年(嘉元1)以降は,提出された譲状の袖に,執権・連署がそれを認める旨の証判を加えて申請者に交付した。これを安堵の外題といい,このような行為を外題安堵といった。土地財産に関する証拠書類を火事盗難などのために紛失した場合には,それに代わる文書を新たに作成する。そしてはじめは京職,国司,郡司などの,のちには検非違使,守護,荘園領主さらには在地の有力者といった保証能力をもつ人の証判をもらって,前の文書と同じ効力を付与する。これを紛失証判という。鎌倉末期ごろからは着到状,軍忠状といった軍事関係文書が新たにみられるようになる。これらの文書にもその申出の旨を確認したことを示す証判が加えられる。
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世界大百科事典(旧版)内の証判の言及

【紛失状】より

…盗難,焼失などによる文書紛失の事実を公示し,亡失文書の効力を引き継ぐことを目的として新たに作成された文書をいう。多くは土地証文に関するもので,紛失の日時・原因を記し,旧文書の無効と新文書の発効を告知する申請文書と,被申請者による証判の二つの要素からなっている。紛失状の原型は紛失日記であり,紛失日記とは事発日記(事件発生の当日に,事件の内容・日時などを記録し,在地の郡司・刀禰(とね)などが証判を加えた公的記録)の一種で,動産,建物,文書などのさまざまな亡失財物の記録を眼目としたものである。…

※「証判」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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