調製粉乳(読み)ちょうせいふんにゅう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「調製粉乳」の意味・わかりやすい解説

調製粉乳
ちょうせいふんにゅう

乳幼児の人工栄養哺育(ほいく)を目的として、牛乳のタンパク質、脂質微量成分などを人乳の組成に近づけるように調製した粉乳。通常、牛乳の成分組成は、人乳に比してタンパク質の含有量が高く、しかもアルブミングロブリンの含有量は低い。脂質についてはリノール酸、リノレイン酸などの不飽和脂肪酸の含有量が低く、ミネラルについてはカルシウム、リン含有比率が低く、ナトリウム、カリウム含有比率が高いなどの組成バランスの差がある。これを小児栄養学ならびにWHO、FAO勧告国際規格などに準拠して、人乳組成にあわせて成分調製をする。かつて乳児の人工栄養源は加糖または無糖練乳であったが、小児栄養学の進歩によって近年著しく改善がなされ、乳タンパクアレルギー症のための牛乳をまったく使用しない粉乳、先天性アミノ酸代謝異常症乳児のためのタンパク質中の特定アミノ酸を除去した粉乳なども利用されている。

[新沼杏二・和仁皓明]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

栄養・生化学辞典 「調製粉乳」の解説

調製粉乳

 母乳代替物ともいう.牛乳の成分を主体に育児用に,諸種の加工処理や成分の補正を行った粉乳.特定の疾病の成人患者が摂取するために調製された粉乳についてもいうことがある.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の調製粉乳の言及

【牛乳】より

…母乳による育児が最も優れているが,母乳の不足,母親の病気,就労などの理由で母乳が与えられない場合がある。その際に牛乳をそのまま与えることは成分の相違のため乳児の栄養にとり不適当な点があるので,牛乳の成分を質的,量的に変えて,できるだけ母乳に近づけた製品の調製粉乳(育児用粉乳)が与えられる。牛乳のタンパク質は含量が母乳の2.6倍と多いのみならず,性質も異なる。…

【人工栄養】より

…栄養料として最も多く用いられるのは牛乳であるが,ほかにヤギ乳または大豆乳(豆乳)などが用いられることもある。 人工栄養の歴史は古いが,人工栄養に頼れるようになったのは1930年ころからであり,日本で調製粉乳が用いられるようになったのは50年過ぎからである。歴史的にみれば人工栄養の成功の原因としては,(1)牛乳や水での細菌汚染に対する対策の樹立(19世紀後半~20世紀前半),(2)冷蔵庫の出現,(3)ソフトカード化(1920ころ),(4)牛乳成分,とくにその濃度を人乳に近づけたこと,(5)ビタミン,とくにCおよびDの分離(1930ころ)とその添加,があげられる。…

【粉乳】より

…牛乳に比べて,容積が小さく,軽くて保存性がよいので,貯蔵や輸送に便利である。使用される原料や用途によって,全脂粉乳,脱脂粉乳,調製粉乳などの種類がある。製造にあたっては製品の溶解性を低下させないために,なるべく新鮮な牛乳を用いる。…

※「調製粉乳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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