谷川雁(読み)タニガワガン

デジタル大辞泉 「谷川雁」の意味・読み・例文・類語

たにがわ‐がん〔たにがは‐〕【谷川雁】

[1923~1995]詩人評論家熊本の生まれ。本名いわお。三井三池炭鉱争議や安保闘争支援で知られる。詩集に「大地の商人」、評論に「工作者宣言」「原点が存在する」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「谷川雁」の意味・わかりやすい解説

谷川雁
たにがわがん
(1923―1995)

詩人、評論家。熊本県葦北(あしきた)郡水俣(みなまた)町(現、水俣市)に生まれる。本名、巌(いわお)。眼科医の父侃二(かんじ)の次男。兄は健一(1921―2013。民族学者、評論家、日本地名研究所初代所長)。1942年(昭和17)に東京帝国大学文学部社会学科入学。1945年に学徒出陣で千葉県の陸軍野戦重砲兵隊入隊。敗戦(第二次世界大戦)。同大学卒業。西日本新聞社整理部に勤務する。1946年九州タイムス記者安西均(ひとし)(1919―1994)と知り合い、同紙に執筆。1947年安西均、小田雅彦らの『九州詩人』に同人として参加。同年丸山豊(1915―1989)、安西均らの『母音』に参加。1949年日本共産党九州委員会で活動。1950、1951年と結核療養。1954年『母音』に「原点が存在する」を書く。当時「東京へゆくな ふるさとを創れ」(「東京へゆくな」・第1詩集『大地商人』収録)という詩句が喧伝(けんでん)された。1958年上野英信(ひでのぶ)(1927―1987)、森崎和江(1927―2022)、石牟礼(いしむれ)道子らと『サークル村』創刊。1960年安保闘争で共産党脱党。詩風は喩(たとえ)を駆使した革命的ロマンチシズムともいうべき反逆的な詩を底辺である原点から発するものとして注目された。1961年に吉本隆明らと『試行』を創刊(同誌は1964年より吉本の単独主宰となる)。1965年以降、いっさいの執筆活動をやめ、上京。翌1966年、ラボ教育センターを創立し、子供たちの表現活動を指導する。1978年長野県黒姫に移住。1980年にラボ関係の職務を離れるが、1981年少年少女の成長を期待して「十代の会」を、翌年「ものがたり文化の会」を設立して、児童教育的活動を続けた。

 詩集は『大地の商人』(1954)、『天山』(1956)、『谷川雁詩集』(1960)、『谷川雁詩集』(現代詩文庫2・1968)があり、評論集としては『原点が存在する』(1958)、『工作者宣言』(1959)、『戦闘への招待』(1961)など多数。他に『谷川雁作品集』全5巻(1976~1977)がある。

[村田正夫]

『『大地の商人』(1954・母音社)』『『戦闘への招待』(1961・現代思潮社)』『『谷川雁詩集(現代詩文庫2)』(1968・思潮社)』『『原点が存在する』(1976・潮出版社)』『『谷川雁作品集』全5巻(1976~1977・潮出版社)』『『工作者宣言』(1977・潮出版社)』『『意識の海のものがたりへ』(1983・日本エディタースクール出版部)』『『極楽ですか』(1992・集英社)』『『谷川雁の仕事』2冊(1996・河出書房新社)』

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百科事典マイペディア 「谷川雁」の意味・わかりやすい解説

谷川雁【たにがわがん】

詩人,評論家。本名厳。熊本県生れ。東大社会学科卒業。戦後,西日本新聞社の記者となるが,労働争議を指導し解雇。詩集《大地の商人》(1954年),《天山》(1956年)を刊行し,1958年,森崎和江上野英信らと福岡県中間市で《サークル村》を創刊する一方,積極的に反体制運動を展開,1950年代末の三池闘争(三池争議)に加わり,大正炭鉱を拠点に大正行動隊を組織して活動した。1960年《定本谷川雁詩集》を刊行,詩作を断つと宣言。評論集に《原点が存在する》《工作者宣言》《戦闘への招待》など。その思想は,1960年代の反体制思想に大きな影響を与えた。1980年代には教育グループ〈十代の会〉,〈ものがたり文化の会〉を主宰した。
→関連項目谷川健一谷川道雄

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「谷川雁」の解説

谷川雁 たにがわ-がん

1923-1995 昭和後期-平成時代の詩人,評論家。
大正12年12月25日生まれ。民俗学者・谷川健一の弟,東洋史学者・谷川道雄の兄。「西日本新聞」記者となり,「九州詩人」「母音」の創刊に参加。共産党に入党,労働争議で解雇される。昭和29年詩集「大地の商人」,34年評論集「工作者宣言」をだし,三井三池争議や安保闘争を支援。のち「十代の会」「ものがたり文化の会」を主宰した。平成7年2月2日死去。71歳。熊本県出身。東京帝大卒。本名は巌(いわお)。著作はほかに詩集「天山」,評論「原点が存在する」など。

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