豆蔵(読み)まめぞう

精選版 日本国語大辞典 「豆蔵」の意味・読み・例文・類語

まめぞう まめザウ【豆蔵】

〘名〙
① (江戸時代延宝一六七三‐八一)の頃、大坂にいた力持乞食の名から) 手品曲芸をし、滑稽な身振口上で人を笑わせて銭を乞うた大道芸人。豆蔵坊主。〔随筆・斎諧俗談(1758)〕
おしゃべりな人をののしっていう語。まめ。
※雑俳・さくら鯛(1823‐24)二「口に出来るほどしゃべるから豆蔵」
③ きわめて背の低い者。小人。一寸法師。
※浮世草子・西鶴名残の友(1699)四「大女房まめ蔵両頭の亀」
④ 釣合い人形。紙人形に細い竹をつけ、両端重りをつけて平衡を保つようにしたもの。与次郎人形
※雑俳・三また竹(1730‐36頃)「見廻して狸の鼻に豆蔵置く」
⑤ 紋所の名。④の形を図案化したもの。二つ豆蔵菱、三つ豆蔵など。

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デジタル大辞泉 「豆蔵」の意味・読み・例文・類語

まめぞう〔まめザウ〕【豆蔵】

江戸時代、手品・曲芸やこっけいな物まねなどをして銭を乞うた大道芸人。
軽薄なおしゃべりをする人をののしっていう語。
非常にからだの小さい男をいう語。

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改訂新版 世界大百科事典 「豆蔵」の意味・わかりやすい解説

豆蔵 (まめぞう)

大道芸の一種。滑稽な身ぶりや口上で手品や曲芸をし,銭を乞うた大道芸人をいう。《嬉遊笑覧》に,〈放下師を今は豆蔵といふ,《斎諧俗談(さいかいぞくだん)》といふ物に,貞享元禄(1684-1704)の頃,摂津国に一人の乞士あり名を豆蔵といふ,市中に出て常に重きものをささげて銭を乞ふ……〉とあり,大坂市中で豆蔵という者が腹の上に臼を置いて餅をつかせたり,鎗(やり)を鼻の先に立てるなどの曲芸をして人気があったらしい。これ以後ほかの者も豆蔵の名を使うようになり,芸の名称としても用いられた。元来放下ほうか)に属する曲芸を大道で演じたもので,辻放下の一種と思われる。
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世界大百科事典(旧版)内の豆蔵の言及

【弥次郎兵衛】より

…享保(1716‐36)ころの浮世絵にもすでに登場しているが,名称の語源は与二郎という門付(かどづけ)が,笠の上でこれを舞わして見せて銭をもらい歩いたのが始まりという。与二郎兵衛,与二郎人形からさらに弥次郎兵衛,弥次郎人形,釣合い人形,水汲み人形,豆蔵などさまざまな名がつけられた。また正直正兵衛とも呼ばれたが,これはユラユラ揺れ動きながらも,つねに直立に立とうとする姿に由来する。…

※「豆蔵」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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