豊岡(市)(読み)とよおか

日本大百科全書(ニッポニカ) 「豊岡(市)」の意味・わかりやすい解説

豊岡(市)
とよおか

兵庫県北東部、豊岡盆地の中心を占める市。1950年(昭和25)城崎(きのさき)郡豊岡町と新田(にった)、五荘(ごのしょう)、中筋(なかすじ)の3村が合併して市制施行。1955年奈佐(なさ)、港の2村を編入。2005年(平成17)城崎、竹野(たけの)、日高(ひだか)、出石(いずし)、但東(たんとう)の5町を合併。円山(まるやま)川下流の沖積低地である豊岡盆地を中心とし、冬は雪、夏は雨が多く、晴天の日は少ない。盆地内は低湿のため開発は周辺から始まり、中心集落の形成は1580年(天正8)羽柴(はしば)(豊臣(とよとみ))秀吉但馬(たじま)平定後、宮部継潤(みやべけいじゅん)が亀山(現在の神武(じんむ)山)に豊岡城を構えたことに始まる。江戸時代は豊岡藩城下町として栄えた。1925年(大正14)の北但(ほくたん)大震災で旧市街地の70%を焼失したが、復興計画で区画整理を実施し、面目を一新した。

 第二次世界大戦後は但馬文教府など県や国の地方機関が集中して但馬の中核都市となった。JR山陰本線と京都丹後鉄道宮豊線の分岐点、また国道178号と312号、426号、482号の合流点にあたり、国道483号も通じている。交通、経済の中心でもあり、県下最初の卸センターがある。1994年(平成6)にはコミューター空港であるコウノトリ但馬空港が開港している。特産物の柳行李(やなぎごうり)は藩主京極(きょうごく)氏の保護奨励で始まったが、第二次世界大戦後は本来の杞柳(きりゅう)製品にかわって、その伝統技術を生かした合成樹脂、合成皮革などの鞄(かばん)生産が発展、全国有数の生産量を誇る、鞄の町となっている。豊岡杞柳細工は伝統的工芸品に指定されている。また、南東部の山間地に豊岡中核工業団地も造成されている。円山川河口一帯は山陰海岸国立公園域で城崎マリンワールド、豊岡海域公園、海水浴場があり、すこし上流には柱状節理の奇勝玄武洞(げんぶどう)(国指定天然記念物)がある。特別天然記念物のコウノトリが県立コウノトリの郷(さと)公園および保護増殖センターで飼育されている。菓子の神とされる田道間守(たじまもり)を祀(まつ)る中嶋神社(なかじまじんじゃ)は全国製菓業者の崇敬を集め、室町時代の本殿は国の重要文化財。畑上(はたがみ)の大トチノキは国の天然記念物。面積697.55平方キロメートル、人口7万7489(2020)。

[大槻 守]

『『目で見る豊岡の文化史』(1965・豊岡市)』『『目で見る豊岡の明治100年史』(1969・豊岡市)』『『豊岡市史』全4冊(1981~1993・豊岡市)』


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android