豊田氏(読み)とよだうじ

改訂新版 世界大百科事典 「豊田氏」の意味・わかりやすい解説

豊田氏 (とよだうじ)

大和国山辺郡豊田(現,奈良県天理市豊田町)の中世土豪。豊田は石上(いそのかみ)神宮祭祀する布留(ふる)郷の一村で,大和平野の東縁部のほぼ中央にある。豊田氏は南北朝内乱期から台頭し,豊田中坊が興福寺衆徒(僧兵)に起用され,豊田城に拠った。1430年(永享2)に隣接の井戸氏と戦ったが,筒井氏の援助をもとめたため,反筒井氏の越智氏ら南大和衆が井戸氏を助けて決起,長期の大和南北合戦となり,応仁文明の乱に移行する。当時,豊田頼英(らいえい)が付近の東寺領河原城荘(現,天理市の中心街地)の代官職に任ぜられたりしたが,布留郷の郷民の規制が豊田氏の武士化発展を制約したため,大小名化には至らなかった。戦国末期,筒井順慶に属して松永久秀と角逐したが,筒井順慶の大和国支配時代に先んじて衰退したと思われる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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