豚に真珠(読み)ブタニシンジュ

デジタル大辞泉 「豚に真珠」の意味・読み・例文・類語

ぶた真珠しんじゅ

新約聖書マタイ伝」第7章から》貴重なものも、価値のわからない者には無意味であることのたとえ。猫に小判

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精選版 日本国語大辞典 「豚に真珠」の意味・読み・例文・類語

ぶた【豚】 に 真珠(しんじゅ)

(「新約聖書」マタイ伝・七章にみえることば) 価値のわからない者には、貴重な物も何の役にもたたないことのたとえ。猫に小判。
園遊会(1902)〈国木田独歩〉三「君等に美術の話を為たって無益だ。豚(ブタ)真珠(シンジュ)を投ずる如しだ」
[補注]「引照新約全書‐馬太伝福音書」に「豕(ブタ)の前に爾曹(なんぢら)の真珠(シンジュ)投与る勿れ」とある。

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ことわざを知る辞典 「豚に真珠」の解説

豚に真珠

豚に真珠を与えても意味がない。価値のわからない者に貴重なものを与えても何の役にもたたないことのたとえ。新約聖書に由来する西洋のことわざで、「豚に真珠を投げるな」ともいう。

[使用例] 君等に美術の話を為たって無益だ。豚に真珠を投ずる如しだ。[国木田独歩*園遊会|1902]

[使用例] 文科的に自由な清新な空気は教室のどこにも存在しなかった。こんな連中を前にして、文学がどうの、芸術がどうのといっている中田博士は、まるきり豚に真珠を撒いているようなものだ。俺は、博士が気の毒になった[菊池寛*無名作家の日記|1918]

[使用例] 主人の最高技術を尽してみたとて、それは高級なら高級なほど所詮鋸山には豚に真珠であることがわかっている[幸田文*流れる|1955]

[解説] 新約聖書(マタイ伝七章六)の大正期の翻訳をみると、「聖なる物を犬に与うな。真珠を豚の前にぐな。おそらくは足にて踏みつけ、向きかえりてなんじらを噛みやぶらん」とあります。この豚はかなりどうもうな獣のようで、今日の「豚に真珠」の豚から受ける印象とは相当な隔たりがあるといえるでしょう。また、明治後期から大正にかけての用例では、「豚に真珠を投ずる」や「~を撒く」など、動詞がついた形ですが、その後はたぶんに「猫に小判」の影響を受け、しだいに動詞が省略されるようになりました。
 現在では、聖書との関連は特に意識しないで、「猫に小判」と同じ感覚で使われています。日本でも童話アニメを通じて、豚が「猫」と同様のかわいいキャラクターとして徐々に社会的に浸透してきたことがその下地となったようです。

〔英語〕Do not cast your pearls before swine.(豚の前に真珠を投げるな)

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故事成語を知る辞典 「豚に真珠」の解説

豚に真珠

価値のわからない者には、貴重なものも何の役にも立たないことのたとえ。

[使用例] 主人が妓の最高技術を尽してみたとて、それは高級なら高級なほどしょせん鋸山には豚に真珠であることがわかっている[幸田文*流れる|1955]

[由来] 「新約聖書―マタイ伝・七」に出て来る、イエスのことばから。口語訳では、「聖なるものを犬にやるな。また真珠を豚に投げてやるな。恐らく彼らはそれらを足で踏みつけ、向きなおってあなたがたにかみついてくるであろう」とあります。

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