貝おほひ(読み)カイオオイ

デジタル大辞泉 「貝おほひ」の意味・読み・例文・類語

かいおおい〔かひおほひ〕【貝おほひ】

江戸前期の俳諧発句合わせ。1巻。松尾芭蕉編。寛文12年(1672)刊。当時の小歌こうたや流行詞などを用いた発句30番の句合わせに、その判詞を添えたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「貝おほひ」の意味・わかりやすい解説

貝おほひ
かいおおい

俳諧発句合(はいかいほっくあわせ)。1冊。宗房(むねふさ)(芭蕉(ばしょう))判。1673年(寛文13)刊。三十番俳諧合。書名は、古くからある女子の遊戯「貝おほひ」の、あわせて勝負をみるところから由来。作者は伊賀上野(いがうえの)(三重県)の人々で、判者は芭蕉。上野の天満宮に菅公(かんこう)770年忌を期して奉納され、江戸で出版された。序に「小六(ころく)ついたる竹の杖(つゑ)、ふしぶし多き小歌にすがり、あるははやり言葉の……」とあるように、判詞は、当時遊里や巷間(こうかん)で流行した小唄(こうた)や、伊達者(だてもの)の六方詞(ろっぽうことば)などを自由奔放に用い、洒脱(しゃだつ)軽妙につくられている。芭蕉の句は「きてもみよ甚べが羽織花ごろも」「女(め)をと鹿(じか)や毛(け)に毛がそろふて毛むつかし」の2句。全体に遊蕩(ゆうとう)的な気分が横溢(おういつ)しており、青年期の芭蕉や社会風潮をうかがうに足るものがある。

[雲英末雄]

『杉浦正一郎著『芭蕉研究』(1958・岩波書店)』『井本農一・堀信夫校注『古典俳文学大系5 芭蕉集』(1970・集英社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「貝おほひ」の意味・わかりやすい解説

貝おほひ
かいおほひ

江戸時代前期の俳諧発句合 (ほっくあわせ) 。松尾芭蕉著。1巻。寛文 12 (1672) 年刊。伊賀上野の俳人 36人の句 60句を左右 30番の発句にし,芭焦が判詞を加え,郷土上野の天満宮に奉納したもの。当時流行の小歌や六方詞 (ことば) が自由自在に駆使され,軽妙洒脱,談林俳諧先駆ともみられる。

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