貝類/主要用語解説(読み)かいるいしゅようようごかいせつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「貝類/主要用語解説」の意味・わかりやすい解説

貝類/主要用語解説
かいるいしゅようようごかいせつ

【 】の無いものは、巻き貝、二枚貝、掘足類、頭足類の各類に共通。

 *印は別に本項目があることを示す。

足(あし) foot
 イカ・タコ類を除いて動物体の腹側にあり、柔軟性に富む筋肉からなる。砂や泥に潜る二枚貝では斧(おの)形、岩にしっかりつく笠(かさ)貝では吸盤状、泳ぐカメガイ類では翼形など、生活と運動に適応した形に変わっている。

外唇(がいしん) outer lip
 【巻き貝】殻口の外側のへり。種によっては内壁沿いに結節列や螺(ら)状の細肋(さいろく)などの彫刻がある。

外套膜(がいとうまく)* mantle
 軟体動物の体表を覆っている筋肉質の膜。その外縁から貝殻を分泌する。殻のあるものでは内側を裏打ちするようなかっこうになっているが、殻のないものでは表皮はかなり強固になっている。

外套湾入(がいとうわんにゅう) pallial sinus
 【二枚貝】套(とう)湾入ともよぶ。殻内面に残る外套膜の付着痕(套線、外套痕(こん)などとよぶ)のうち、後方に生じる凹入部をいう。これは、出入水管をつかさどる水管筋肉の付着していた痕跡で、湾入が深ければそれだけ水管が長い。

殻径(かくけい) diameter
 【巻き貝】殻の最大直径をさす。正確には殻幅、笠形の貝の場合は殻口(長・短)径という。二枚貝の殻幅を殻径とするのは誤りである。

殻高(かくこう) shell height
 【二枚貝】背腹の最大距離。【巻き貝】殻でいえば上下、動物体でいえば前後の最大距離。殻長に等しい。

殻長(かくちょう) shell length
 【二枚貝】【掘足類】殻の前後の最大距離。【巻き貝】殻高に等しい。

殻頂(かくちょう)
 【二枚貝】umbo 左右の殻片の最初に形成された部分。種類によっては原殻が残っている。多くの種では殻頂はやや巻き込んだように前に傾いている。【巻き貝】apex 最初に形成された部分。胎殻が残っている場合が多い。種によっては巻き込まれていて外からみえない。

殻底(かくてい) base
 【巻き貝】螺層のうち、最終層(体層)の周縁角から下方の部分をいう。ニシキウズガイ科などではほとんど平坦(へいたん)である。

殻幅(かくふく) shell breadth
 【二枚貝】左右殻片をあわせた状態の最大左右距離。【巻き貝】殻の径に等しい。

滑層(かっそう) callus
 【巻き貝】殻口内唇や、種によっては螺塔にも被覆するエナメル質のような物質。多くは白いが、淡紅色などに着色している種もある。

後溝(こうこう) posterior canal
 【巻き貝】殻口の外唇と内唇の出合うところが浅い溝状になっている場合、その部分をいう。オキニシ科などでは管状になっていて顕著である。

鉸歯 hinge teeth
 【二枚貝】左右の殻片のかみ合わせの構造。通常、一方が凸の歯になっていると、他方はこれとはめ合わさる凹のソケット(歯溝)となっている。同形同大の歯が並ぶ多歯式や、大小の歯が放射状に並ぶ異歯式などの形式がある。

後耳(こうじ)・前耳(ぜんじ) ear(s)
 【二枚貝】イタヤガイ科、ウグイスガイ科のような翼形類の殻頂の前後に付属する耳形の付属片。通常、前耳の下(腹側)に足糸の出る湾入(足糸窩(か))がある。

傘膜(さんまく) umbrella
 【頭足類】腕と腕との間をスカートのように連絡する筋肉の膜。

軸唇(じくしん) columellar lip
 【巻き貝】外唇と向かい合い、殻口内の殻軸に沿ったへり。種によって滑層が沈着していたり、ひだがあったりする。

歯舌(しぜつ) radula
 軟体動物特有のそしゃく器官で、二枚貝のみがこれを欠く。口内の舌軟骨上にのるキチン質のリボンで、その上に規則正しく小歯が並んでいる。リボンは歯舌嚢(のう)からつねに新生され、鋭い部分を食物にあてがって、やすりのようにこすり取る。巻き貝でとくに発達し、分類上有用な特徴となっている。

縦肋(じゅうろく) axial rib
 【巻き貝】成長肋とほぼ等しい。間隔があいて生じるとくに太いものを縦張肋といい、アクキガイ類などではその上に棘(とげ)が生えている。

出水管(しゅっすいかん)・入水管(にゅうすいかん) exhalent and inhalent siphon(s)
 【二枚貝】高等な二枚貝では外套膜後端が癒合して2本の管を形づくっている。腹側の管が入水管で、ここから呼吸用の水が入り、背側の管が出水管でここから不用になった水や、糞(ふん)、生殖物質も吐き出される。下等な二枚貝にはなく、臨時に外套膜がくっつき合って水流を分ける。

楯面(じゅんめん) escutcheon
 【二枚貝】殻後背部にある稜(りょう)で囲まれたレンズ断面形の区域。通常ここに外靭帯(じんたい)がある。

小月面(しょうげつめん) lunule
 【二枚貝】殻頂の前に浅い溝で囲まれた区域をさす。マルスダレガイ科においてもっとも顕著である。

触腕(しょくわん) tentacle(s)
 【頭足類】イカ類には4対に分かれた腕以外に、特別に伸縮する1対の腕があり、これをいう。吸盤の並び方もその性質も他の8本とは異なっている。

靭帯(じんたい) ligament
 【二枚貝】左右の殻片を結び付けている角質の帯。楯面(じゅんめん)などの殻外面に存在する場合と、鉸歯の間などの内側にある場合がある。後者の場合、弾帯とよぶことがある。靭帯は殻をあけようとして働く。

唇弁(しんべん) labial palp
 【二枚貝】口の前に付属している2対(4枚)の三角形の肉片器官。これで口に入る食物の選別をする。クルミガイ類などでは長くくちばし状に伸び、これを殻の外まで出して餌(えさ)をあさる。

成長線(せいちょうせん) growth line
 貝殻の成長にしたがって殻上に残る微細な線。二枚貝の場合は殻頂を中心に、腹縁の曲線平行な同心円状に現れる。巻き貝の場合は殻口外唇に平行な縦線状に現れる。はっきりみえる場合は、成長脈(脉)という語を使うことがあり、成長線や成長脈が高まり畝(うね)状にもり上ると成長肋という。

前溝(ぜんこう) anterior canal
 【巻き貝】水管溝ともいう。殻口の底部(動物体でいえば最前部)に形成されている半管状の溝。中腹足目の一部と新腹足目にあり、ときには長い管状をしている。ここから外套膜の延長した水管を出す。

胎殻(たいかく) protoconch
 【巻き貝】原殻ともいい、最初にできた殻で、通常は殻頂に残っている。あとからできた成殻の部分と、色や彫刻、ときには巻き方も異なっている。

体層(たいそう) body whorl
 【巻き貝】もっとも新しく形成された螺層。ここに軟体部の大部分が入っている。

中腸腺(ちゅうちょうせん) midgut gland
 軟体動物の消化器官で、胃から枝分れした管を経て微細な袋になり、食物はこの中で細胞内消化される。一般に肝臓とよばれるが、高等動物の肝臓とは構造的に異なっている。

内唇(ないしん) inner lip
 【巻き貝】殻口外唇とは後溝を挟んで隣り合い、軸唇に連続する部分をいう。体層の底部にあたり、滑層の沈着をみる場合が多い。

軟体(なんたい) soft part
 貝殻に対し、柔らかい動物体の部分をいう。

左巻(ひだりま)き・右巻(みぎま)き sinistral and dextral
 【巻き貝】殻頂から貝の成長方向に向かって殻を見て、時計回りなら右巻き、反時計回りなら左巻きという。海産巻き貝の大部分は右巻きであるが、一部の科には全部左巻きのものや、本来右巻きの種に左巻きの奇形が出ることがある。

蓋(ふた) operculum
 【巻き貝】足の後背面から分泌される角質の器官。軟体が殻内に退縮すると殻口をふさぐ。サザエ類などでは石灰化している。円形、木の葉形、つめ形など変化に富む。

閉殻筋(へいかくきん) adductor muscle
 【二枚貝】殻内面の前後につく筋肉で、平滑筋と横紋筋の2部分に分かれている。殻をつねに閉じようと働く。翼形類では通常、前閉殻筋は退化的で、後閉殻筋が大形化し中央に移っている。

臍孔(へそあな) umbilicus
 【巻き貝】螺管は想定上の軸を中心にして螺旋を描いているが、中心が殻質で埋められないとき、そこに残る穴をいう。ときには蓋(ふた)状の臍盤(さいばん)や栓状の臍索で、完全にまたはなかばふさがっている。

縫合(ほうごう) suture
 【巻き貝】螺層の階と階の境目。

放射肋(ほうしゃろく) radial rib(s)
 【二枚貝】殻頂から腹縁に向かって成長線を横切って伸びる畝。【巻き貝】笠形貝のような場合、殻頂から殻口へ向かう畝を放射肋とよぶ。

螺層(らそう) whorls
 【巻き貝】巻き貝の構造は、下の方向にだんだん太くなる管(螺管)が螺旋状に巻いて重なり合っているので、その1階(360度)ごとを螺層という。

螺塔(らとう) spires
 【巻き貝】体層の上にある階全体をさす。

螺肋(らろく) spiral rib(s)
 【巻き貝】螺状肋ともいう。各層の螺管の成長方向に平行に生じる縦のすじ(螺脈)が、立ち上がった畝となっているとき、畝全体は殻頂から殻高の方向へ向かって一続きの螺旋状の軌跡を描くので、このようによぶ。

卵嚢(らんのう) egg case
 【巻き貝】卵を産み出すとき、それを入れる袋をいう。ゼラチン質のものから、厚い革質のものまであり、後者は「ホオズキ」といわれる。

輪肋(りんろく) concentric rib(s)
 【二枚貝】成長線に沿って現れる畝が、同心円状に配列するところからこの用語が用いられる。成長肋と同義語。成長脈を輪脈ということもある。

漏斗(ろうと) funnel
 【頭足類】頭部腹面にある管状の器官で、腕と相同器官といわれる。ここから墨汁、排出物、生殖物質を出すだけでなく、外套膜を強く収縮することによって漏斗から強く水を吐き動物はすばやく進む。漏斗の向きにより頭足類の進行方向がコントロールされる。

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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