(読み)むさぼる

精選版 日本国語大辞典 「貪」の意味・読み・例文・類語

むさぼ・る【貪】

〘他ラ五(四)〙 (「ぼる」は「欲る」の意という)
① 欲深く物をほしがる。飽きることなく望み続ける。貪欲に自分のものとする。
書紀(720)舒明即位前(北野本訓)「然れども我豈天下を餮(ムサホラ)むや」
源氏(1001‐14頃)夕顔「朝の露に異ならぬ世を、何をむさほる、身の祈りにか」
② 欲ばって食べる。がつがつして食べる。むさぼり食う。
鉄眼禅師仮名法語(1691)二「淵の魚の餌をむさぼるに似たり」

とん【貪】

〘名〙 (「どん」とも。「とん」は呉音、「どん」は慣用音)
仏語。六根本煩悩の一つ。また三毒十悪などの一つ。貪愛、貪欲ともいい、五欲対象に執着する迷い。
秘蔵宝鑰(830頃)中「第五〈略〉見為因貪為縁」
② (形動) むさぼること。物をほしがること。また、そのさま。
幸若・しつか(室町末‐近世初)「一たむのとむにふけってせっしゃうをするぞはかなき」

むさぶ・る【貪】

〘他ラ四〙 =むさぼる(貪)
※大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃)「濫(みた)りかはしく殊の礼を叨(ムサフ)りて」
※六物図抄(1508)「人が、長大にするほどに、我も長大に増めせうと云て、むさぶり競也」

むさぼり【貪】

〘名〙 (動詞「むさぼる(貪)」の連用形名詞化) 欲深く物をほしがること。欲ばること。
※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「鄰の財を数へむ従(より)は、曾(むかし)の貪(ムサボリ)に替へてむに如かじ」

とん‐・ず【貪】

〘自サ変〙 物などをほしがって、むさぼる気持になる。また、欲ばる。
発心集(1216頃か)七「物に貪(トン)じ物を惜みて多くの罪を作りて今餓鬼の身を受たり」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「貪」の意味・読み・例文・類語

どん【貪】[漢字項目]

常用漢字] [音]ドン(慣) タン(漢) トン(呉) [訓]むさぼる
むやみにほしがる。欲が深い。「貪愛とんあい貪欲どんよく貪欲とんよく貪欲たんよく貪婪どんらん貪婪たんらん慳貪けんどん

とん【貪】

仏語。三毒の一。むさぼり求める心。

たん【貪】[漢字項目]

どん

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