貯鉱(読み)ちょこう(英語表記)ore storage

改訂新版 世界大百科事典 「貯鉱」の意味・わかりやすい解説

貯鉱 (ちょこう)
ore storage

製錬工程・選鉱工程への供給,精鉱の出荷などに備えて鉱石類を蓄えること,または蓄えられた鉱石類。貯鉱の目的は供給や出荷に対する量的安定性を確保することにあるが,さらに品質の異なる鉱石類の配合や,品質的にばらつきの多い原料の均一化を目的とする場合もある。

 貯鉱には,野天あるいは大屋根をかけた土場,または地面を掘り下げたり,囲いを設けるなどのやり方でしつらえた場所(ヤードyard)を利用する方法と,円筒形または角筒形の大きな容器を1ないし複数個用いる方法とがある。前者は主として数万t以上の大量の貯鉱に,後者はそれ以下の量の貯鉱に,それぞれ用いられている。

 ヤードで貯鉱される鉱石類の積上げ(積付けともいう)と払出しには,ブルドーザーパワーショベルなどの一般的な荷役機械が使われる場合もある。しかし製鉄所などにみられるような大規模で本格的な貯鉱ヤードにおいては,鉱石類の積上げはスタッカーstacker,払出しはリクレーマーreclaimerと呼ばれる専用設備によって行われるのが普通である。鉱石はスタッカーの往復移動によって細長い形に積み上げられていく。その断面安息角(〈粉粒体〉の項目参照)によって三角形または台形となる。こうして形成された鉱石類の山はベッドbedと呼ばれ,ベッドは平行な対をなすように作られる。スタッカーによって一つのベッドに鉱石の積付けが行われている間に,他方のベッドからはリクレーマーによって払出しを行うことができる。リクレーマーは安息角を利用してベッドを端から崩しながら,鉱石を回収していく。スタッカーはヤードに到着した鉱石類をベッドの長手方向に何回も振りまくように積み重ねていくのに対し,リクレーマーはこのベッドを端から切り崩していくので,払い出された鉱石の品質は一つのベッドを形成するのに要した時間にわたって均一化されることになる。

 容器によって貯鉱を行う場合,その容器は貯鉱舎鉱舎,(貯鉱)ビンbin,バンカーbunker,ホッパーhopperなどと呼ばれる。貯鉱舎はコンクリート鋼板などで作られ,全体の形状は円筒形または角筒形が一般的である。下部は平底のものもあるが,ふつうは逆円錐形または逆角錐形となっている。容器の底部には1ないし複数個の排出口が設けられ,そこにはふつう定量供給のための供給装置フィーダーfeederが取り付けられている。貯鉱舎は貯鉱ヤードに比して一般には貯鉱容量が小さく,したがって均一化能力も小さいが,特殊な設計によって均一化能力を高めたものもある。これらは均一化バンカーなどと呼ばれている。オルガンパイプバンカーやスリットバンカーはその例である(図)。

 単純な容器にすぎないようではあるが,貯鉱舎には壁面や底部への静的・動的圧力とそれに対する強度設計,壁面や隅部への鉱石類の付着の防止,排出における閉塞の防止,容器内の流れパターンの改善など,種々の技術上の問題があり,研究が重ねられている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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