賃金指数(読み)チンギンシスウ(英語表記)wage index

デジタル大辞泉 「賃金指数」の意味・読み・例文・類語

ちんぎん‐しすう【賃金指数】

賃金水準変動を示す指数過去のある時期賃金を100とし、他の時期の賃金をこれとの比で示す。

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精選版 日本国語大辞典 「賃金指数」の意味・読み・例文・類語

ちんぎん‐しすう【賃金指数】

〘名〙 労働者の賃金水準を時間的・場所的に比較する指数。労働価格としての賃金水準の変化を示す指数、国民経済全体としてみた労働者一人当たりの収入水準の変動を示す指数、企業立場からみたコストとしての賃金の指数などがある。名目賃金指数実質賃金指数とに分けられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「賃金指数」の意味・わかりやすい解説

賃金指数
ちんぎんしすう
wage index

労働者に支払われている賃金を、時間的、地域的に、または業種間などで、その水準や変動状況を比較可能なように、一定時点を基準として指数化したもの。その作成方法としては、一般的に、現時点の賃金支払総額を基準時点のそれで割る方法と、現時点の労働者1人当りの平均賃金を基準時点のそれで割る方法とが考えられる。前者の作成方法によるものは賃金総額指数、後者のそれは平均賃金指数とよびうるものである。賃金指数は、本来、他の諸物価と対比可能なように、あるいは、平均的な一労働者の労働の対価を把握しうるように作成されるべきものであるが、実際には、指数作成の基礎資料上の制約から、これらのいずれかの作成方法によるのが普通である。そして、いずれの指数においても、基準時点から比較時点(現時点)に至る間に生じた雇用構造(業種、年齢、性別など)の変動の影響が入り込むことは避けられない。この影響は、基準時点から遠く離れるにしたがって、一般に無視しえないものとなるため、ときおり基準時点を更新することが行われる。

 現在わが国で作成されている賃金指数は、作成方法からは平均賃金指数に該当し、厚生労働省で行われている「毎月勤労統計調査」から得られる平均賃金に基づいて作成されている。常用労働者5人以上および30人以上の事業所を対象に、現金給与総額、定期給与、所定内給与について、産業(大分類および製造業中分類)別に作成されている。これらは名目賃金指数であるが、そのほかに、現金給与総額および定期給与に関しては、名目賃金指数を消費者物価指数でデフレートすることによって、実質賃金指数が作成されている(ただし、全産業および全製造についてのみ)。

[高島 忠]

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改訂新版 世界大百科事典 「賃金指数」の意味・わかりやすい解説

賃金指数 (ちんぎんしすう)

労働者の賃金水準の時間的変化を示す指数。国際的には,労働者の稼得賃金に関する実収賃金指数と,労働力の銘柄(職種など)別契約賃金率の変化を総合した賃金率指数があるが,日本では前者の指数のみが作成されている。日本の賃金指数(労働省作成)は,30人以上の常用労働者を雇用する事業所の月当り平均賃金(税込み)を指数化したもので,定期給与(きまって支給する給与),現金給与総額(きまって支給する給与プラス賞与等特別給与額)および所定内給与について,(1)産業(大・中分類)別,(2)事業所規模別,(3)都道府県別に作成されている。

 賃金指数は,賃金率の変化のみならず,労働者構成の変化によっても変動するものである。

 高年齢化,高学歴化,労働者の都市集中化は,賃金指数を賃金率の動向以上に高めることになり,女子化,パートタイム労働者化は逆に低める作用を及ぼす。そのほか出勤日数(出勤率),超過勤務手当割増率の変化も賃金率に影響を及ぼす。なお,上述の名目賃金指数を消費者物価指数でデフレートした実質賃金指数が,賃金の実質的な消費購買力を示す指標として作成される。
賃金統計
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「賃金指数」の意味・わかりやすい解説

賃金指数
ちんぎんしすう
wage index

賃金水準を指数化したもの。その本来的な目的としては,(1) 労働力の価格としての賃金水準,(2) 国民経済全体としての労働者1人あたり平均賃金水準,(3) コストとしての人件費総額などの変化を示すことがあげられる。現在日本で発表されている月々の賃金指数は (2) の意味をもつもので,厚生労働省の毎月勤労統計調査による平均賃金を,基準時を 100とする指数として発表するものである。これに対して (1) の意味からは労働者の年齢別,性別,職種別,事業所規模別などのウエイトの変化を折込んで算出されるべきであり,このためには厚生労働省の賃金構造基本統計調査が用いられる。また (3) の意味については国民所得統計によって分析されることになる。なお諸外国における賃金指数も通常は (2) の意味における指数であるが,一定の労働に対する一定時間あたりの賃金,つまり賃金率の指数となっていることが多く,比較にあたっては注意が必要である。

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