精選版 日本国語大辞典 「賑給」の意味・読み・例文・類語
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〈しんきゅう〉ともいう。賑恤(しんじゆつ)とも書く。律令制下において高齢者,僧尼,身寄りのない者,困窮者,病人,被災者で自活できない者などに,稲穀,布,綿,塩などを支給する制度である。天皇の即位,立太子,改元,祥瑞,豊作,皇族の死去・病気など国家の慶事・大事に際して実施されるもの,疫病,災害,不作,飢饉によるものなど契機は多様である。対象地域は全国的規模のものと小地域から数国を対象とする限定的なものとに大別できる。天平期の正税帳や739年(天平11)の出雲国大税賑給歴名帳,773年(宝亀4)の太政官符案などでは地域別の受給者数,支給量など具体的な実施状況が知られる。支給物の中心は稲穀で,正倉に備蓄された田租穀の支出の大部分が賑給の費用で占められた時期もあった。しかし実情は救済の必要度の高い困窮者,病人の受給者数,支給量が高齢者や身寄りのない者に比べかなり少なく,困窮者,病人,被災者などは選択基準が不明確で,各地域の実施担当者の意思に左右されるという問題もある。国司らが該当者の水増しなどの不正により大量の稲穀を詐取することもあって,制度は実施担当者につごうのいい存在となり,救済面での実効性はさほど評価できない。平安期にはいるとしだいに形骸化し,毎年5月吉日に京中の困窮者に米塩を支給する朝廷の恩恵を示す儀式となった。
→義倉 →救急田 →慈善事業
執筆者:舟尾 好正
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字通「賑」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
賑恤(しんじゅつ)とも。古代において,天皇即位・祥瑞出現などの国家の慶事・大事や疫病流行・飢饉に際して,正税または義倉穀をさいて,稲穀・布・綿・塩などを高齢者,夫や妻を失った者,貧窮者,病人,被災者らに支給する制度。支給の基準があいまいで,また被災者よりも高齢者に手厚いことから,実際の救済効果よりも,むしろこれらの行為によって天皇の徳を強調しようとする,儒教思想の影響下に実施されたものと考えられる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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…その他個人で孤児や貧農の救済を行う者などいくつもの活動例があるが,藤原氏の一族のみの救済を目的として大臣が財源を提供したり施設を建て,その運営を施薬院等にゆだねている例や,私財による救済活動を行った豪族の中には位階の取得を目的とした者も考えられることなど,問題を含んだものも少なくない。 一方,全国規模のおもな公的救済制度としては賑給(しんごう)・義倉(ぎそう)・常平倉(じようへいそう)・湯薬支給・借貸(しやくたい)などがある。いずれも仁愛・仁政思想によるものとみられるが,理念どおりに機能していれば,限界をもちながらも一定の効果は期待できたであろうが,各制度の実態をよくみると問題は少なくない。…
…対象地域は全国的規模のものと小地域から数国を対象とする限定的なものとに大別できる。天平期の正税帳や739年(天平11)の出雲国大税賑給歴名帳,773年(宝亀4)の太政官符案などでは地域別の受給者数,支給量など具体的な実施状況が知られる。支給物の中心は稲穀で,正倉に備蓄された田租穀の支出の大部分が賑給の費用で占められた時期もあった。…
…その他個人で孤児や貧農の救済を行う者などいくつもの活動例があるが,藤原氏の一族のみの救済を目的として大臣が財源を提供したり施設を建て,その運営を施薬院等にゆだねている例や,私財による救済活動を行った豪族の中には位階の取得を目的とした者も考えられることなど,問題を含んだものも少なくない。 一方,全国規模のおもな公的救済制度としては賑給(しんごう)・義倉(ぎそう)・常平倉(じようへいそう)・湯薬支給・借貸(しやくたい)などがある。いずれも仁愛・仁政思想によるものとみられるが,理念どおりに機能していれば,限界をもちながらも一定の効果は期待できたであろうが,各制度の実態をよくみると問題は少なくない。…
※「賑給」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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