質侶牧(読み)しとろのまき

日本歴史地名大系 「質侶牧」の解説

質侶牧
しとろのまき

現在の金谷町および島田市南部付近に所在した古代の牧。永久元年(一一一三)一〇月一四日の遠江守源基俊請文案(東大寺図書館蔵宗性筆唯識論第五巻問答抄紙背文書)に質侶牧とみえ、源基俊は質侶牧の訴えに対し牧の一部を収公した釈明の請文を提出している。質侶牧は平安時代中期を過ぎた頃、大江公資の私領となっていたが、長暦年中(一〇三七―四〇)公資が民部卿藤原長家に寄進し、長家を本家とした。本家職はのち前太政大臣藤原信長、信長から同俊家へと受継がれ、預所職が公資から嫡子広経、広経から外孫藤原永実へと伝領された。

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百科事典マイペディア 「質侶牧」の意味・わかりやすい解説

質侶牧【しどろのまき】

遠江国にあった古代末期。現在の静岡県金谷(かなや)町(現・島田市)および島田市の大井川以南の地域に比定される。平安中期頃に公家の大江公資(きんすけ)の私領となっていたが,長暦年間(1037年−1040年)に民部(みんぶ)卿藤原長家(ながいえ)が本家職(ほんけしき)を取得した。これに対し,預所職(あずかりどころしき)は公資から嫡子広経(ひろつね),外孫藤原永実(ながざね),その嫡子永範(ながのり)へと伝領された。この間,1112年頃に本家職は永実に売却され,牧は再び上級領主の保護のない私領に戻った。1127年永範は質侶牧を待賢門(たいけんもん)院鳥羽上皇中宮)の御願(ごがん)寺として建立された京都円勝寺(現京都市左京区)に寄進,翌年円勝寺領質侶荘として立券(りっけん)された。立券にあたって質侶牧の検注帳が作成され,それによると牧の総面積は1744町余,内訳は田209町余,畠126町余,原210町,山547町,野291町,河原360町となっており,在家数は218。→立券荘号

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改訂新版 世界大百科事典 「質侶牧」の意味・わかりやすい解説

質侶牧 (しどろのまき)

遠江国蓁原(はいばら)郡(現静岡県島田市,旧金谷町)の牧。同牧ははじめ大江公資の私領で,嫡子広経,外孫藤原永実,その子永範と伝領された。初期の本家は民部卿長家であったが,1128年(大治3)永範の寄進により待賢門院璋子の御願寺円勝寺領となり,立券にあたって牧の四至内検注がおこなわれた。このとき作成の検注目録によると,田209町,畠126町,原210町,山547町,野291町,河原360町,在家218宇。預所はひきつづき永範が沙汰した。鎌倉期になると同牧も荘号を称し,板垣兼信地頭であったが,違勅以下の不当を訴えられ,1190年(建久1)源頼朝によって改替された。
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