赤の女王仮説(読み)アカノジョオウカセツ(英語表記)Red Queen hypothesis

デジタル大辞泉 「赤の女王仮説」の意味・読み・例文・類語

あかのじょおう‐かせつ〔あかのヂヨワウ‐〕【赤の女王仮説】

ある生物種が、生息域や食性が競合する他種や天敵との関係において、生存のために絶えず進化を続ける必要があるという仮説有性生殖進化速度の向上をもたらし、感染症などへの対抗手段として重要な役割を持つとする。
[補説]L=キャロル小説鏡の国のアリス」に登場する赤の女王による「同じ場所にとどまるためには力の限り走らなければならい」という言葉にちなむ。1973年に米国の生物学者バン=ベーレンが提唱

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知恵蔵 「赤の女王仮説」の解説

赤の女王仮説

生物の種は絶えず進化していなければ絶滅するという仮説。ルイス・キャロルの小説『鏡の国のアリス』に登場する赤の女王の、「同じ場所にとどまるためには、絶えず全力で走っていなければならない」という言葉にちなむもので、進化生物学者リー・ヴァン・ヴァーレンによる造語。現状を維持するためには、環境の変化に対応して進化しなければならないこと、例えば、食うもの(捕食者)は、もし食われるもの(被食者)がより素早く逃げる能力を獲得すれば、今まで通りに餌を取るためには、より速く走れるように進化しなければならないといったことを指す。さらに近年では、無性生殖よりもコストがかかるにもかかわらず、有性生殖が行われる理由として、赤の女王仮説が持ち出されることもある。すなわち、有性生殖は絶えず新しい組み合わせの遺伝子型を作ることによって、進化速度の速い細菌や寄生者に対抗していると考えるのである。

(垂水雄二 科学ジャーナリスト / 2008年)

赤の女王仮説

ルイス・キャロル作『鏡の国のアリス』の赤の女王の言葉にちなむ。「同じ場所にとどまるためには力の限り走らなきゃ」というのが、種や遺伝子が生き残るためには、周囲の生物が進化して生ずる環境変化に対応し、進化し続けなければならないという意味で使われる。捕食動物と餌動物が種間で行う軍拡競争(デザインの改善)などの説明にも使われる。大分類群の中で科や属がほぼ一定確率で絶滅していることの説明のために、1973年にファンヘーレンが提出した仮説。

(小畠郁生 国立科学博物館名誉館員 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

法則の辞典 「赤の女王仮説」の解説

赤の女王仮説【Red Queen hypothesis】

「ある生物種を取り巻く環境は,他種の生物の進化的変化などの影響で絶えず悪化しているから,常に持続的な進化を継続していなければ絶滅に至る」という仮説.もともと絶滅率一定の法則*を説明するために考えられた.この名称はルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』の中で,赤の女王がアリスに向かっていった「同じ場所にとどまるためには,力の限り走らねばならぬ」という言葉に因んでいる(よく出典を『不思議の国のアリス』だと書いてある辞典類があるが,このセリフが出てくるのは『鏡の国のアリス』のほうである).

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