起振機(読み)きしんき(英語表記)exciter

翻訳|exciter

改訂新版 世界大百科事典 「起振機」の意味・わかりやすい解説

起振機 (きしんき)
exciter

時間とともに正弦波形で変化する力を加えて構造物に強制振動を起こさせる装置。構造物を台の上にのせて振動させる振動台vibration tableとは異なる。ピストン運動によって外から構造物に力を加えるものと,構造物そのものに取り付け,遠心力を利用して力を加えるものに大別できる。加える力の大きさと振動数が制御できるようになっているので,起振力の振動数(周期)を系統的に変化させて構造物各部に発生する振動変位を測定すれば,構造物の共振振動数(固有振動数),そのときの揺れの形と減衰量が求められる。測定された振動特性を理論的計算値と比較することによって,構造物の設計時の仮定や解析手法の妥当性が検証される。起振機実験は,機械や構造物の縮尺模型など比較的小さな対象物から実物大の大型船舶,飛行機高層ビル,橋,ダムなどまで多種多様な構造物に対して実施され,動的荷重が作用するときの構造物の信頼性,安全性の照査に用いられている。例えば,原子力発電所においては,原子炉建屋や重要配管系を完成後に起振機実験をして,設計時の耐震解析の妥当性を確認している。構造物に設置して使う起振機は,半径rだけ偏心した質量m角速度ωで回転させたときに生ずる遠心力mrω2を利用したもので,ふつうは2個以上の遠心力発生部分を適当に組み合わせて1方向の力だけを取り出すしくみになっている。二つの偏心質量を図のような位置関係で逆方向に回転させると,遠心力の水平方向の成分は互いに相殺され上下方向だけの起振力が得られる。遠心力はω2に比例して増大するので,回転速度にかかわらず一定の起振力を得るためには特別な機構が必要である。複雑な構造物の起振機実験では,何台かの起振機を適切な位置に設置して同位相または逆位相で同時に運転することによって,測定の精度を向上させることも必要となる。
共振
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android