おつ‐ど ヲツ‥【越度】
〘名〙
① 令制において、
鈴鹿、
不破、愛発の三関およびその他の
関所を破ること。通行許可証を持たず、
関門を経ないで通過すること。罪科に処せられた。
おっと。
※律(718)衛禁「越度者、各加二一等一。不レ由レ門レ為レ越」
※釈氏
往来(12C後)三月日「縦励
二魯愚之性
一。難
レ遁
二越度之恐
一」
※
こんてむつすむん地(1610)一「物がたりしてをつどあらんよりは、まったくいはざるはなをやすき事なり」
③ 江戸時代、目安
(めやす)(=
訴状)の裏に書かれた召喚状の書止
(かきとめ)。指定の
期日に出頭しない場合は越度になると書かれていた。
武士、
僧侶、
神官などの召喚状に用いられ、これに対し、
百姓、
町人の場合は曲事
(くせごと)の語が用いられた。
※鵜飼左十郎窺御儀定‐下田在勤中日記(1849)(
古事類苑・法律五六)「一訴状裏書之事〈略〉
相手に神主寺院等加り候節は、可
レ為
二越度
一者也と申文言之差紙遣候由に候得ば」
おち‐ど ヲチ‥【越度・落おち度】
〘名〙 あやまち。手落ち。過失。おつど。
※金刀比羅本保元(1220頃か)中「為朝鎮西には居住して、今迄各を見知ざりけるこそ越度(ヲチド)なれ」
※
日葡辞書(1603‐04)「ヲツド。または、vochido
(ヲチド)。ノリヲ コユル〈訳〉あやまち、または罪悪」
[語誌]古くは「越度」と書かれ、ヲッドまたはヲチド、ヲツドとよまれたと思われる。「越度」は元来「おつど(越度)①」のような許可証なしに関所を越え度
(わた)る関所破りの罪であるが、
中世には関所の制が衰える一方、「度」が
規則と解せられ、
日葡辞書のように「のりをこゆる」罪悪、違法の意から更に過失、手落ちをいうようになった。
近世には「落度」の表記も見え、明治になって過失の「落度」が一般化した。
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デジタル大辞泉
「越度」の意味・読み・例文・類語
おつ‐ど〔ヲツ‐〕【▽越度】
1 律令制で、関所を破ること。通行許可証を持たず、関門を経ずに通過すること。罪科に処せられた。
2 法に反すること。〈日葡〉
3 「おちど」に同じ。
「隠れたる瑕の少し候を、かくとも知らせまゐらせで進じおき候ひし事、第一の―にて候」〈太平記・二六〉
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越度 (おつど)
前近代の法律語。〈おちど〉ともいい,江戸時代には〈落度〉とも書いた。(1)律令用語としては,養老律の衛禁律(えごんりつ)に定められた関津以外の,通行禁止の場所を通過するのを越度といい,越度には私度(通行証なしに関津を通る)の罪に一等を加えるという規定があり,また越度未遂の罪,馬牛を率いて越度する罪なども定められた。(2)中世以降,過失犯の意となり,また転じて広く法律違反,有罪の意ともなったが,通じて量刑を明示しないで罪過を規定する場合に用いられたようである。なお,江戸幕府では,武士,神官,僧侶に対しては越度といい,百姓,町人に対しては〈曲事(くせごと)〉といって,法律用語を使い分けた。(3)日常語として,戦国時代の奥州・北陸地方で戦死,死没の意に用いられ,また広く過失,手落ちの意に用いられて今日に及んでいる。
執筆者:佐藤 進一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
越度
おちど
養老の衛禁律にみえる犯罪の一種。関所を正規の通路によらずに越える行為。3関は徒1年半,摂津,長門の関津は徒1年に処せられる。ただし国境の越度については,その条文が日本律に存在したのかどうか論争が繰返されている。越度の語は,後年本来の意味からはずれて,再訴訟の意に用いられたり (清原業忠『貞永式目聞書』) ,さらに「落度」などと記され,広く刑罰を加えられる行為,さらには,過ち全般をさす用語として使用された。後者の場合は,律令法律用語が日本社会に定着した好例である。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
普及版 字通
「越度」の読み・字形・画数・意味
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