踏込(読み)ふみこむ

精選版 日本国語大辞典 「踏込」の意味・読み・例文・類語

ふみ‐こ・む【踏込】

[1] 〘自マ五(四)〙
① 踏んで落ち込む。
※大鏡(12C前)二「南のつらのいとあしき泥をふみこみて候つれば」
② 足を踏み出して勢いよく前へ進む。
浄瑠璃烏帽子折(1690頃)名尽し「ふみこんで一討に遊ばせ」
③ 足を踏み出して中へはいる。進んで行ってある場所にはいる。また、物事に深くはいり込む。〔羅葡日辞書(1595)〕
坑夫(1908)〈夏目漱石〉「一歩不安の中へ踏み込んだ訳になる」
④ 無断ではいり込む。強引にはいり込む。
※評判記・色道大鏡(1678)四「たとひなじみの人これへふみこみ給とも」
境界を越えてはいり込む。
※さらばモスクワ愚連隊(1966)〈五木寛之〉一「お互い三十代にようやく踏みこんだばかりだった」
[2] 〘他マ五(四)〙
① 力を込めて踏む。踏んで押し込む。また、足を深く中へ入れる。
義経記(室町中か)七「くびかきはなし、ゆきの中にふみこうで」
② 物事に自分の気持を一段と深入りさせる。また、物事を思い切ってする。
政談(1727頃)三「下たる人、身をふみ込て可勤様決て無之事なれば」
③ そのままの状態で事をはこぶ。身なりなどをかまわないでいる。
※雑俳・柳多留‐初(1765)「春迄はふみこんで置女ぶり」

ふん‐ご・む【踏込】

(「ふみこむ(踏込)」の変化した語)
[1] 〘自マ四〙
日葡辞書(1603‐04)「ドロニ fungomu(フンゴム)
幸若・高たち(室町末‐近世初)「くまのかはのもみたび、しろかねにてへりかねやって、あくちたかにふむこうだり」
※虎寛本狂言・老武者(室町末‐近世初)「身共も踏込(フンゴ)んで御盃をいただいて見せう」
④ 思い切ってする。気張ってする。
浮世草子世間胸算用(1692)四「来年はかならずあがるべきものを考、ふんごんて買置の思ひ入あふ事より」
[2] 〘他マ四〙 =ふみこむ(踏込)(二)①
※俳諧・貝おほひ(1672)五番「消残る雪間や諸あしふんごんだ〈一友〉」

ふみ‐こみ【踏込】

〘名〙
① 足を前に踏み出すこと。また、物事に深くはいり込むこと。「踏み込みが足りない」
② 家の上がり口玄関など、はきものを脱いで置く所。
※咄本・一のもり(1775)三角「玄関が三角ふみこみへそばがら」
日本舞踊で、左右の足をとんとんと拍子を取って踏み続けること。また、その所作

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「踏込」の意味・読み・例文・類語

ふん‐ごみ【踏込/踏籠】

踏込袴ふんごみばかま」の略。
歌舞伎衣装の一。女形がすねの見えないようにつける紅絹もみ股引ももひき状のもの。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の踏込の言及

【袴】より

…(11)野袴 江戸時代に武士が旅行などに着用した袴で,襠が高く,緞子(どんす)などで作り,裾にはビロードの縁をつけた。(12)踏込(ふんごみ)野袴の,裾のごく細いもので,江戸時代に着装された。(13)馬乗(うまのり)袴 馬に乗る必要から襠を高くし,裾をやや広く仕立てた袴で,緞子などで作り,ビロードの裾縁をつけたものや,裾縁をつけない縞の木綿などで仕立てたものもあった。…

※「踏込」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android