軸受鋼(読み)じくうけこう(英語表記)bearing steel

改訂新版 世界大百科事典 「軸受鋼」の意味・わかりやすい解説

軸受鋼 (じくうけこう)
bearing steel

ボールベアリングなどのころがり軸受ころを受ける内輪および外輪に使用される鋼。炭素量を1%程度含むほか,クロムを1%内外含む高炭素クロム鋼が,おもに使用される。使用上の要求から,鋼中に非金属介在物がほとんど含まれないことと,素地中に球状炭化物が相当量(7~8%)含まれることが要求される。また中心部は比較的低炭素量にし,表層を高炭素量にした浸炭処理を施した〈ころ軸受〉も使用されることがある。炭化物を球状化して機械加工し,その後球状化炭化物を残したまま焼入れ焼戻しをし,硬さをロックウェル硬さでC63程度以上に調質して使用する。同じ程度の炭素量を有する工具鋼熱処理は似ている。この高炭素クロム鋼のほかに,13%クロム・ステンレス鋼も使用される。この場合の炭素量は0.6%程度である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「軸受鋼」の意味・わかりやすい解説

軸受鋼
じくうけこう
bearing steel

ころがり軸受に用いる鋼で、約1%の炭素と0.9~1.6%のクロムを含有する。回転軸を支える軸受にはすべり軸受ところがり軸受とがあるが、後者ボールまたはころレースの点または線接触の状態で非常に大きな荷重が接触部にかかる。これに耐えるため、きわめて硬いクロム・鉄炭化物粒子を、焼入れによって得られる非常に硬い素地(マルテンサイト)中に微細に分散させた軸受鋼が用いられる。

[須藤 一]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「軸受鋼」の意味・わかりやすい解説

軸受鋼
じくうけこう
bearing steel

ボールベアリング,ころ,ボールレースなどに用いられる鋼種で,もっぱら炭素 0.9~1.1%,クロム 0.9~1.6%の高炭素クロム鋼が用いられる。キルド鋼原料とし,十分な鍛造または圧延によりセメンタイトの粗大な網目組織を破砕したのち,加熱再結晶により結晶粒を微細化し,さらに球状化焼鈍したのち焼入れ,適宜低温で焼戻して使用する。

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百科事典マイペディア 「軸受鋼」の意味・わかりやすい解説

軸受鋼【じくうけこう】

ボールベアリングなどのころがり軸受の内・外輪や玉,ころを作る特殊鋼。耐摩耗性に特にすぐれることが必要で,主として高炭素クロム鋼を使い,大型品には肌焼(はだやき)鋼,耐熱・耐食性を要するものにはステンレス鋼も使われる。

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